壁画通りを作ろう｜リアクション

壁画通りを作ろう

●落書きを見て

　羽生碧南は、部活が終わると走って制服姿でキャットロードへ新作乙女ゲーを買いに。
　その途中、壁に描かれた何かがチラッと見えたので足を止め、じっくりと見た。
「なにこれ……」
　そこには、スプレーで描かれた落書きが。しかも壁一面に。
　悪趣味な落書きに眉をしかめ、嫌なもの見ちゃった……と唖然。それより乙女ゲーよ！　と急いでその場を去った。
　新作乙女ゲーを買った店で、路地に描かれた落書きを消す人、壁画を作ってくれる人を募集中なことを店員が話してくれた。
　うちの店長、頭痛いって困ってるよ……とため息をつきながら。
　行われる日時を確認すると、その日は部活はない。悪趣味なものは消す！　と碧南は落書き消しを志願。

　キャットロードの路地は猫スポットなので、猫好きな恵御納夏朝は猫と遊ぶべくそこに向かった。
　猫がいたので遊ぼう……と思った矢先、壁に描かれた落書きが目に止まった。
「ひどい……」
　抱き上げた猫にそう話しかけるが、猫は大あくびをし「関係な～い」と言っているようだった。
　それを気にせず猫と遊んだ帰り、シーサイドタウン駅で落書きを消し、壁画を作ってくれる人を募集中の話を聞いた。
「壁画を描くの、とてもいいと思う……僕も描きたい……描かせて下さい！」
　キャットロードの壁画作りの話を聞き、夏朝は、猫の絵をたくさん描こうと参加を決めた。
　落書きした人に猫の可愛さを教える、とたくさん描こうという意欲を燃やして。
「恵御納も、落書きを消す前に見に来たのか」
　御剣刀も、落書き消し募集に応じたひとりだ。
「僕は壁画を描くほうだけど……これ……早く消えないかな……」
「そうだな。描きたくなる気持ちは分からなくはないが、人通りの多い所でこんなものが晒されると店や住民にどう思われるか考えたことがないのか」
　落書き犯がやったことを想像したら気分が悪い。刀は、こんなもの早く消したいという気持ちに。

　落書きを見ているふたりに、八神修が近づいてきた。
「これは、消し甲斐がありそうだ」
　寝子祭にむけての大掃除で演説するほどの掃除好きであることを知っている夏朝と刀は、あの時と同じように張り切るんだなと思った。
　落書き消し当日に、修がダウンしなければいいけど……とも心配した。
　重労働になりそうだ、と思うと刀と修は気が重くなってきたので。夏朝は壁画のデザインを考えるべく帰宅。

　その数時間後。
「描いた奴のモラルと美的感覚を疑うぜ」
　仕事帰りにシーサイドタウン駅で落書き消しの募集を見た曖浜鴻は、その前に実際の落書きを見に来た。
　美術に疎く画力はないが、あまりにひどいというのはわかる。
「許せねえな」
　周囲は薄暗いのでどのような落書きかははっきり見えないが、子供に見せられない悪質なものはないようだ。
「いかにも不良がスプレーで描いたってカンジだな。非常にタチが悪いぜ」
　警察への連絡や証拠写真撮影等は、既に関係者が行ってるだろう。
　俺にできるのは落書きを消すこと。落書き犯を懲らしめてやりたい思いは、消すことにぶつけることに。

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