壁画通りを作ろう｜リアクション

壁画通りを作ろう

●綺麗にしよう！

　数日後。
　近辺住民と落書き消し募集に応じた協力者達は、キャットロードの路地の壁に描かれた落書きを消す作業を。
　オレンジ油の落とし液、剥離液といった落書きを消すための溶液は、広範囲なので多めに用意。
　ブラシ、刷毛、デッキブラシ、タワシ、頑固汚れを落とす高圧洗浄機といった道具は商業施設や住民達が用意してくれた。
　溶液使用にあたり、製品に記載されている使用方法、使用上の注意等を確認。
　周辺の人や物への影響を防ぐための作業環境を確保。
　人や車の通行障害とならないように十分注意しつつ、各自、作業を始めた。

「消すための物を用意してもらえるのはありがてぇ……欠片も残さず消しきってやるぜ！」
　人一倍落書きを許せない曖浜鴻は、落書き落とし液をブラシにつけて擦ったり、液を染み込ませる。
　溶液を刷毛で塗り、効果が出て浮き上がるまでは他の落書き消しを。
　下地の状況や気温の高低により効果が出る時間に差が生じるが、だいたい３０秒から２分ほどかかる。
「俺も消しきる！」
　Ｔシャツにジーンズ、タオルで準備万端の御剣刀も鴻に倣い、落書きに落とし液を染み込ませる。
「私も負けないわよ。さっさと消して、綺麗にしちゃおう！」
　寝子高ジャージ上下、その下にオレンジのＴシャツを着た羽生碧南はデッキブラシを手にすると汚れが浮き出た落書きを擦り始めた。

「範囲が広いし、大きい落書きが多い……」
　以前はざっと見ただけなので、改めてじっくり見ると時間がかかる。
　範囲が広いうえ、デカデカと描かれているものもあるので綺麗に消えるかどうか。
　八神修は、それが心配になってきた。
「考える暇があるならさっさとやる」
　刀にブラシを持たされ、手を動かすことに。
　住民達も手伝っての作業だが、暗くなる前に終わるかどうか……と思うと修は気が重くなった。
「時間はかかるだろうが、皆で手分けすれば早く終わるだろう。さっさとやろうぜ」
　気落ちする修の肩をポンと叩き、鴻は作業を促す。
　皆で頑張れば早く終わるだろう。そう考え直し、修も作業にとりかかる。
「高いところは私に任せて」
　長身を活かし、碧南は脚立を使い高い位置にある落書きに液体を染み込ませた。
　
「こっちはだいぶ溶けだしたな」
　鴻は垂れている液体を先に紙で拭き取ってから、柔らかめのブラシで水洗い。
　拭いた紙は、ゴミ袋に入れて回収し持ち替えるのを忘れない。ゴミを持ち帰るのも美化活動のひとつだ。
「染み込みきってる部分があるな……こいつは厄介だぜ。高圧洗浄機等を使わないと落ちねえな」
「俺に任せてください」
　その部分は、高圧洗浄機を装備した修が消すことに。
　勢い良く出る水を壁に噴射しながら、幽霊退治のコメディ映画みたいな感で面白いと楽しんでいる。
　そう思うと、落書きが消えてまっさらな壁がどんどん美しくなっていくのが快感に。
　高圧洗浄機は楽に綺麗になるが、実際はそれなりにキツイものがある。
　掃除機と違ってけっこう重く、反動に常に踏ん張らなくてはならない、ホースをブレさせてもいけない。
　消す範囲が広いので、修ひとりでやると体力はそれなりに消耗する。
　予想以上の重労働にヘトヘトになったが、綺麗になった壁を見ると達成感と満足感を得られた。

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