せんせいといっしょ：川添先生編｜リアクション

せんせいといっしょ：川添先生編

「そうそう、五十嵐先生全く頭の鳥に気づいてないんですよねー不思議ですよねーめっちゃ鳴いてるのに。まあ世の中フシギなことばかりなので作品の題材には困らないといいますか」

　そう川添先生の横で休憩を決め込んだ月詠が言うと、
「大丈夫なのだ、真央ちゃんのがおーと同じなのだ、センセだってそのうち頭から猫や犬が生えるのだ♪」
　と、材料集めて何つくろ、とりあえず休もっとな感じの後木真央が、ちゃっかり月詠とは川添先生を挟んだ反対側に座りながら、言葉を重ねる。

「そうなの？　なんだか君たちがいうと、すごく本気で言ってるように聞こえてしまうからすごいねぇ」
　世に不思議なことはあるものだねぇ、と周囲で時々くりひろげられるろっこん現象（？）に言及し、それへ月詠と真央が答えたことへの返しがこれである。
「先生――泰然自若もなかなかなのだ」
「うむ、ここまで自然に物事の在り様を受け入れるのはさすがだ」

　同じ芸術の徒としては見習わねばなるまい。謎の感慨を抱く月詠。
　どうやらもれいびになりかけているらしい先生の様子に、試しにろっこんの説明をしてみた結果がこれであった。
　不思議現象を目の前で見ていたはず、という点を踏まえても、理解したのかどうかわからない風情を漂わせているあたりが、月詠をして、「何ともとらえどころのない人だな」という印象を抱かせる。

　そんな３人の様子を少し離れた場所では。
　ひっそりと気配を殺しつつ、目だけはしっかりと対象を観察しつづけて。
　「先生の周り女子多いよねぇ、さすがイケメンだなー」と、妄想的な、もとい創作的なアレやソレに思いを巡らせていた、響タルトだった。

「うん、でも僕の願いって言ったら、やっぱりアレだよねー。でも美少年二体ってなるとそのまんますぎるし、ちょっとすぐには作れそうにない大作になっちゃうし――」
　うーん、うーん。
　そんな風にして、目の保養を眺めつつ唸っていたタルトのすぐ近くを涼太郎が通りかかる。

「そうだ花椿くん！」
「はーーーはっはっはっは！、なんだい響くん？」
　あいかわらずの高笑いだねー。そんなコメントを入れつつのタルトが手を合わせて頼み込む。

「ねえ、モデルになってもらってもいい？」
「はーっはっはっは！　いいとも、もちろんだよ！　僕の美がどれくらい表現できるかはわからないけど、好きにしてくれていいよ！　あ、ポーズは必要かな？」
「うん、お願いするね！」

　さぁ美少年がいたし、しっかり先生の中性的な美と花椿くんの若々しい美をしっかり表現するよ！　そんな謎の意気込みとともに、タルトは集めてあった材料の組合せを様々試し始めるのだった。

　そんな二人から少し離れた先生の周りでは、今一人の生徒が姿を見せていた。