せんせいといっしょ：川添先生編｜リアクション

せんせいといっしょ：川添先生編

　ところで、一人海岸から走り去り、一足早く作品を作った後木真央の作品は結局なんだったのだろうか。
　後木真央にとって、美術は絵がきちんと描けないから得意じゃないし、点数も低い。なんで参加したのだろうと頭を抱える程度には、苦手科目の一つだった。

『でもね、彫刻は自由でいいんだ』

　そう言って笑った川添先生の言葉で、ふと真央の脳裏を行きの道すがらで見かけた蒲公英の絵がよぎる。

　アスファルトを裂き咲くタンポポにこれだと思ったから――真央はささっと海岸線を後にすると、一気に学校まで駆け戻り、園芸用スコップとビニール袋を持ち出し、蒲公英の咲く場所へと再び走って向かっていく。

　自由に表現できるのは、嫌いじゃない。
　希望という言葉をどう表現したらいいかわからなかったが、やりたいようにやれればいいんだ、と言われて浮かんだその情景。
　蒲公英を抱え、美術室に戻るとすぐに真央は粘土をこね始めた。
　手早くこねて、形を整え――出来上がったのは、一つの壺。

　にま、と笑みをうかべ、彼女はそれを思いっきり右手でたたきつぶした。

　ぐしゃ、とつぶれた壺の真ん中に、そっと蒲公英を置くと、一つ満足げに笑って、「これで授業終わったのだ♪」とその場を後にするのであった。

　誰もいなくなった教室。

　ひとしきり採点をして回っていた川添先生が、順番に見て回っている中で、壁際におかれたその壺と蒲公英の前に立つ。
　その在り様を見た川添先生が、くす、と笑みを浮かべて見せた。
　それは、ネームプレートもなければ、作品名もないけれど――触れてみたら、不思議と声が聞こえたような気がして……誰が作ったのか、何となく察せられた。

「『どんな場所にも、花は咲く』――か。確かに『希望』だね」

　川添先生は、ポケットから取り出してそっと作品の横に置いた作品名カードへ赤ペンで大きく二重丸を後木の名前とともに書き入れると、「さて次はっと……」と誰にともなしにつぶやいて、他の子の作品へと足を向けるのでありました。

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あとがき

担当マスター：蒼李月
ファンレターはマスターページから！

　今回も、やっぱりと修羅場でした（関係ないところで）

　と、いうわけで、皆さまご参加いただきありがとうございました！
　おかげさまで、川添先生にいっぱい絡んでいただけてうれしゅうございました。

　川添先生、いいですね。イケメン僕っ娘金髪長身のマイペース芸術家。
　どうでしょうか。私としては数え役満です。
　それはさておきまして。
　普段はジャージ、脱ぐとすごい。違う、そうじゃない。
　意外と授業していないようで実はしている風情を醸し出せていたら幸いです。
　でもきっと何も考えてないのかもしれません。。。
　そんな川添先生ですが、また何か機会がございましたら、是非是非絡んであげてくださいませ。

　重ねてになりますが、このたびはご参加いただきありがとうございました。
　またのご縁がありますことを、願いつつご挨拶とさせていただきます。

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