せんせいといっしょ：川添先生編｜リアクション

せんせいといっしょ：川添先生編

【かくて海にて】

　もしかして、と思ったら案の定、海岸についた瞬間に「じゃああとは自習～」と業務を投げ捨てた先生を見て、「この先生大丈夫かな……」と思ってしまった水上桜だったが、ひとまずは同級生や先輩たちに混ざって、材料になりそうなものを物色してまわる。

「でも、あんまり重いのを拾っても、ねー」
　持てないし使えなさそうだし。嵩張らなくってほどよい大きさのものがいいよね。
　貝殻とか小石とか、小さな木材とかかなぁ。

　うーん、と言いつつ波打ち際を歩いている桜。
　つい先ほどまで波打ち際あたりで同級生と海に裸足で入ってみては、「寒い！　まだ寒い！」と叫んだり、偶さか来た大きな波をよけ切れず服の一部が濡れてしまったりしていたわけだが、そろそろ真面目に探すかと物色し始めたところであった。
　まぁ１年生の間で、とりあえず遊んでみようぜ！　となったのもいきなり教師が「自習」と言い始めてたせいかもしれなかったが。

「流石に僕を彩る宝石は落ちてないね、はっはっは！」
「うひゃぁ！？」
　一人思案つつ歩いていたところへ、唐突に横で高笑いが響いたせいで思わず似合わぬ声を上げた桜。
　目線をやれば、花椿涼太郎が鼻歌を歌いながら、落ちている貝殻を大量に拾い集めている姿があった。

「そんなにいっぱい、どうされるんですか？」
「おや、１年生だね！　入学おめでとう。そしてナイスな質問だね！　この子達を集めて貝細工を創ろうと思ってるんだ。僕を彩ることは、貝殻にとっても願いだろうしね！　そうして、この僕の美しさを寝子島だけでなく世界中に届けることができると思うんだよね！　何せ、僕という美の化身を余すことなくパーフェクトに表現するには、他人に頼っていてはいけないと思ってこの授業を受けたのだからね！」

「あー……はぁ……」
　あ、これ関わらないほうがいい部類かしら。

　さくっとそんなことを想うものの、なんとなくこの明け透けさと明るさには好感を覚えなくもない、という不思議な感覚を味わう桜。
　高校生って、やっぱりこういう人たちばかりなのかな……。

　さきほど楡宮が思ったことと似たようなことを、桜もまた思う。
　おそらく、世の高校生が聞いたら、それは違う、と言ったと思われるものではあったが。