おいしい休日♪｜リアクション

おいしい休日♪

「水守君と一緒に、美味しいものフェスタにやってきたぞー！」
　本居陽毬が気勢をあげます。
「うひゃー、すげぇ人だな、結構知ってる顔ぶれも見かけるし、流石美味しい物フェスだぜ」
　隣で言うのは水守流。
　流と陽毬は、おいしいもの大好きな『食い友』でした。
　大食いしても体重が変動しない陽毬は、カロリーを気にせず食べ続けることができるのです……予算があれば。
「よーし水守君、頑張って回ろうね！　立ち止まってる暇はないよー！ガンガン行こう！」
　流の腕をグイグイひっぱり、屋台へ向かう陽毬です。
「で、本居は今日の目当ては何に決めてるんだ？」
「個人的には、しらすコロッケは食べてみたいな。揚げたてのサクサクなタイミングで！　なんでも出来たてっていうのは幸せな気分になるよね～。
　あ、そうそう。私、あのマスコットと写真撮りたいなー」
「マスコットってマンボウくんか？」
「え、違うよ。サンマさんだよ！」
　あれのどこがかわいいんだ……と首を傾げた流ですが。
「だってほら、美味しそうでしょ？」
　と言われて、陽毬らしい、と納得しました。
　ぐー、とお腹の鳴る音が聞こえた気がしました。
「あー、サンマ食べたくなってきた。サンマ出してる屋台を探そう。あと、白飯でてる屋台とかも……あるかなどうかな」
「俺もこのサンマさん一押しシリーズだな、飯つきならやっぱり、かば焼き重なんか美味そうだぜ！」
「美味しそう。一緒に食べたいよね！」
　目を輝かせた陽毬ですが、流はなんとなく嫌な予感に教われました。
「……いっとくがちゃんと自腹で食うんだぞ？　一口交換っていって思い切り大きな口で一口とかもなしだからな！」
　すると、陽毬はバッグからお財布を引っ張りだしました。
「ちなみに、水守君。私の今日の予算は、これだけです」
　お財布の中身を手のひらの上に出します。
　手のひらにあるのは硬貨だけ。
（えっ、お札は？）
　陽毬の顔に視線を移した流に、陽毬はにっこりと微笑んでみせます。
「712円。ななひゃくじゅうにえん」
「……た、大変だな」
「足りない分は奢ってね水守君！」
　思い切りいい笑顔で陽毬は言い放ちました。
「なんでだよ！　俺だってそんな余裕ねえよ」
　きっぱり答えた流ですが、陽毬はあきらめません。
　きゅっと腕に抱きついて、うるうるチワワアイで見つめます！
「無駄遣いしたわけじゃないよ。新しい友達と仲良くなりたくてパーティしたら、まさかすぐにフェスタがあるなんて……私たち、食い友だよね？」
「……ええい！　そのペットショップで買ってアピールをするチワワのような目はやめい！　そりゃ新しい友達とのつきあいは仕方ねえだろうけど……」
　陽毬の目が光りました。
「仕方ないよね！　だから、今回は奢ってくれるよね！」
　ガンガン押してきます。
「……おごりはちょっとだけだからな！」
　とうとう根負けして、流は言ったのでした。