おいしい休日♪｜リアクション

おいしい休日♪

　実は甘いものが好きな八神修も、『寝子島美味しいものフェスタ』にやってきました。
　知り合いはいないかとあたりを眺めていると、ツインテールが目に飛び込んできました。
　彼の一番会いたかった、七夜あおいです。
「あおいも来てたのか。一人か？」
「あっ、こんにちは、修くん。うん、修くんは？」
　あおいは笑顔で挨拶をしてくれます。
「そうか。俺も一人なんだ……せっかくだし、一緒に回らないか」
　ドキドキを隠して、さりげなく、けれどストレートに修は言います。
「うん、行こう。誰かに会えないかなと思ってたの」
「よし、色々巡ろう。あれこれ食べたいけど……」
　少し考え、修は言います。
「シェアして分けようか」　
「いいね、そしたらいろいろ食べられるね」

　二人はパンフレットを手に、さっそく店を回ります。
「見て、かわいい！」
「『こねころころ』か、可愛いよな……あ、恵御納」
「いらっしゃいませ、八神君、七夜さん」
　この店でバイトとは猫好きの恵御納らしいな、と修は思います。
「あれ、前と違うのがあるな」
「気がついた？　新作の『いもこねころころ』なんだ」
　説明されて修もあおいも、なるほどと感心しました。
「あおいは薩摩芋が好きだし、これがいいんじゃないかな」
「えっ、私がさつまいも好きなの覚えてたの？」
　いろんな餡があってたくさん食べちゃいそう、と嬉しそうにあおいは『いもこねころころ』を買いました。
　修も同じものを買ったのは言うまでもありません。

　それから修とあおいは、伸びた猫の形をしたケーキを見つけました。
「『ノビネコケーキ』か」
「可愛い！」
　目を輝かせるあおいに、修は言います。
「分ける時、胴体が真っ二つになって可哀想な気もするな」　
「そうだね……」
　ちょっと戸惑った様子のあおいでしたが、すぐに笑顔になりました。
「でもそれを気にしたらたい焼きも食べられないよ」　
「ああ、確かに。さて、席について食べてみようか」

　テーブルについてケーキを半分に分け。
　美味しく食べていた二人ですが、あおいが修の手に目を留めました。
「修君、その手どうしたの？」
　修の手に、もう消えかけているけれど微かな火傷痕があったのです。
「もう殆ど消えたから大丈夫だよ」
　気づいてくれたこと、声をかけてくれた優しさに修の心は温まります。
「パン焼きに挑戦してるって話をしたろ。それで一寸ね」
「えっ？　修くんでもそんな失敗するの？」
　驚いたようなあおいの言葉に、驚き返し。
「ええっ？　俺だって失敗くらいするよ」
　修は苦笑しました。
「この前あおいは、俺を『何でも出来る』と言ったけど、残念ながらそうじゃない。何度も練習するから……なんだ。なにごともね」
「そうなんだ……」
「万能じゃなくて幻滅した？」
　くす、と修は笑います。
「練習してる事はあんまり気付かれたくないんだ。努力って、見せるものじゃないからさ。ま、あおいならバレちゃっても良いや」
　あはは、と笑う修に、あおいも笑顔を向けました。
「修君が頑張ってるなら、私ももっと頑張らなくちゃね。料理がもっとうまくなれるように」
「パン焼きも楽しいよ。そうだね今度一緒に何か作ろう」
　美味しいお菓子を食べながら、楽しく会話ははずんだのでした。
　