おいしい休日♪｜リアクション

おいしい休日♪

「『寝子島美味しいものフェスタ』？」
　いつも穏やかにニコニコと微笑んでいるマリエッタ・ラシュリエは、色とりどりののぼりの文字を読み、目を輝かせました。
　木天蓼大学院生で、語学も堪能な理系女子という才媛ぶりの上、マリエッタはふわりとした感じの美人でした。
　鎌倉在住ですが、今日は用事があって訪れた寝子島のシーサイドタウン駅前で、美味しいものフェスタに遭遇したのです。
「ラッキー、用事が済むころにはちょうどお昼時だろうし。でも、まずは用事を済ませないと」
　と、フェスタを楽しみにしながら出かけていきました。

　去年も参加して楽しんだ恵御納夏朝は、今年も会場を訪れていました。
　ただし、今年はバイトとしての参加。
　バイト先は、可愛い仔猫を模したころころ小さな丸いおまんじゅう『こねころころ』のお店です。
　去年パンフレットで見つけて子猫の可愛さに一目ぼれし、本物を見てすっかり虜になってしまったのでした。
「……え、新作の『いもこねころころ』？」
　ぼんやりしているように見える夏朝の目が見開かれました。
「お芋の色のこねころころだ……！」
　途端に表情が豊かになった夏朝に、店主さんが説明してくれます。
「寝子島産の芋を使った芋饅頭版こねころころだよ。これがじゃがいも、こっちがさつまいも、これはサトイモ。背中に文字が書いてある」
「すごい……」
「試食用に切ったのがあるから一つずつ食べていいよ」
　夏朝は、どれから食べようか迷いながら楊枝を手に取ります。
「おいしい……！」
　ますますやる気がアップする夏朝でした。

「また美味しい物フェスタが開催されるんですね」
　綾辻綾花も去年に引続きフェスタを訪れていました。
（前回は辛い（からい）経験もしましたけど、今回は美味しい物沢山食べたいですね）　
　そんなことを思いながら露店を眺めていると、見覚えのある人の姿を見つけました。
「珪先生！」
「やあ綾辻さん、偶然だね」
　司書の先生であり、今年は担任の先生となった早川珪先生でした。
　担任の先生なので幸せなことに毎日会えますが、こうして二人きりになれる機会はなかなかありません。
「あの、先生、お願いがあります」
　とっさに考えが浮かんだ綾花は、先生の前に進み出ました。
「何だい？」
「美味しそうなものばかりで目移りしちゃうので困ってたんです。色んな種類を買って二人で食べませんか？　半分こしたら沢山の種類が食べられると思うので」
「なるほど……お腹にも財布にも限りがあるからね」
　珪先生は理解してくれたようです。
「支払いは折半でお願いします」
「いいのかい？」
　先生に負担をかけたくないので、そこは譲れない、と思う綾花です。
「それじゃ、何からいこうか」
「はい！　まずは食事ですよね」
　二人はしらすコロッケの屋台に向かいました。
「いらっしゃい、揚げたてだよ」
　さっそく一つ買って二人で半分こします。
　半分に分けながら綾花は気になっていました。
（先生は小食？　普通？　まさかの大食い！？）
「うまい。衣がサクッとしてるね」
「中はほくほくで、しらすの味もしてて美味しいですね」
　体型からして大食いはなさそうだと思いますが……先生は量のことは何も言わないので、まだわかりません。
　

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