フシギハザード　SEASON CRISIS!!｜リアクション

フシギハザード　SEASON CRISIS!!

■椿美咲紀のシーズンクライシス
「ここもやられているのです……！」
　頭を抱えてうがーとのけぞる美咲紀。
　ここは寝子高の裏にある花壇である。美咲紀が趣味で通って水やりをしているのだが、最近そこかしこの花壇のお花が冬の花に取り替えられてしまうという事件が起きていた。
「これから蒸し暑い季節になるというのに、夏の花々が見られないなんてサミシイではありませんか。それに今から冬のお花を植えても暑さに負けて弱ってしまうのですよ」
　とはいえ植えた花を引っこ抜くのはフラワーガールの美咲紀ちゃんらしくない。
　風通しを良くしたり正午にだけかかる日陰を作ったりと『冬花を夏に育てるテク』をいくつか施してからその場を後にした。

「けど、これがイタズラさんの仕業だとすると犯行現場の特定は簡単かもしれないのです」
　道の端っこで立ち止まり、美咲紀はスマホを取り出した。
　寝子島の地図を画像で保存したものを用意すると、いくつかのエリアをぽちぽちとマークしていく。
「たしか……ここと、ここと、あっ若奥様のお庭もそうでした……」
　驚くなかれ。
　美咲紀は今、寝子高周辺で春の花壇がある場所すべてを思いだしているのだ。
　お勉強大嫌いな美咲紀だが、好きなことはスポンジなみに吸収する彼女である。綺麗な花が見える場所は、勿論しっかり覚えていた。
　お友達にもいませんか。世界三大文明は言えないけどＲＰＧの呪文とその効果は全部覚えている人。
「この中でまだ冬の花に変わってない場所を調べればいいのです！　そして、できれば犯人を……」

　その夜。
　美咲紀は花壇のそばで身を潜めていた。
　具体的にははちまきに植木の枝をさして植え込みの後ろに隠れていた。ベタだが、同じ草木を用いれば結構有効なスニークスキルとなるのだ。
　すると。
「きたのです……」
　なにやら段ボール箱を持って現われた成人男性。顔は黒いもやもやに覆われていた。間違いない、イタズラさんだ。
　だが美咲紀は取り押さえにはいかなかった。
　彼が作業を終えるのをじっと待ち、そして彼が抜いた花を段ボールに入れていくのを確認した。
　そこでようやく。
「今育てるべきは初夏の花！　イタズラをするなら、次の季節の準備を前倒して、見る人に喜ばれるイタズラをすべきなのです！」
　どきりとして振り返るイタズラさん。しかし美咲紀は逃げる隙を与えない。
　あらかじめ用意した園芸支柱で相手の足を引っかけると、素早く転倒させて組み伏せた。

　後日談というか、補足。
　美咲紀はある豪邸の庭へとやってきていた。
　そこには春の花々が咲き乱れ、とても大切に育てられている。
　そのひとつに触れ、美咲紀はフッと笑った。
「イタズラさん。イタズラはしてもお花は傷付けなかったのですね」
　美咲紀は気づいていたのだ。
　花壇の花がすげ替えられたとして、元あった花はどこへ行ったのか。どれも辺りに捨てられた形跡はない。ということは植え替えた誰かが持ち去ったのだ。
　その理由を、美咲紀は察することが出来た。
「綺麗な花を、独り占めしたかったのですかね……」

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