アナタの中のコドモの自分｜リアクション

アナタの中のコドモの自分

◆公園で遊ぼう！（２）
　美咲紀とちび美咲紀が暫しブランコで遊んでいると、バドミントンのラケットを持った姉妹が公園に入ってきた。公園の奥の方、広いスペースに向かったのを横目で見て、美咲紀はちび美咲紀に言った。

「ブランコ乗せてっていったら譲ってあげるのですよ」
「しょーがないのです」

　項垂れる姿もまた子供らしい振る舞いで、修と美咲紀を微笑ませた。次に二人が向かったのは滑り台。ただ上って、滑り降りる。それだけでも充分楽しくて、二人は笑い合った。
　そうしていると、ジャングルジムから降りたちび修が、美咲紀とちび美咲紀を誘った。二人とも喜んで昇り、三人は頂点から公園をぐるりと一望する。ふと視線を下にずらしたちび美咲紀が、昼寝をしている野良猫を見つけた。

「あっのらねこ！」
「よく見えたね。僕、気付かなかった」
「猫じゃらし用意するのです！」

　降りた美咲紀は、その辺の雑草を合わせて猫じゃらしを作る。ちろちろと野良猫の前に出すと、野良猫はそれに飛びついてじゃれついた。ちび美咲紀とちび修が、美咲紀に追いついて一緒に猫と戯れる。

「はー、にゃんこ可愛い……」
「ねこちゃんもあそぶですー」

　転がる猫は、人慣れしているのだろう。撫でまわされたりしても怒らずににゃーん、と甘えた声を出している。猫と過ごす至福の時。三人が堪能していると、それは突然終わってしまった。猫はすっと三人の手から離れて公園の外へ駆ける。

「猫ちゃんさよならなのです」

　名残惜しそうにそれを見送って、美咲紀とちび美咲紀は次の遊びを考えた。

　子供の持つ力には驚かされる。修はそう感じながら、三人の様子を見守っていた。三人は今、かけっこの最中だ。体力自慢の美咲紀も子供の体力にはついていけないようで、走り切る頃にはもうへとへとになっていた。

「おぉー、凄いなのですよ」
「美咲紀ちゃんは、かけっこが速いね」
「えへへー！」

　ちび美咲紀はもう止まらない。公園をどこまでも駆けていくかのようだった。心配になって修が声をかけると、ちび美咲紀も気づいて戻ってくる。
　また見守る体制に戻った修を、ちび修が手招きする。案内された先は、砂場だ。修はバケツに水を汲み、造形を始めたちび修の邪魔にならないよう置いた。

「水で形が崩れないようにして作ると良いよ」
「……ありがとうございます」

　ちび修は黙々と作業を進めた。四角い土台を作り、その上にも四角。ビルのような尖塔も生やしている。

「何を作っているんだい」
「当ててみてください」

　修は砂場の上に聳え立つオブジェを視ながら思考を巡らせた。ビルだろうか、家だろうか。いや……

「……城か！」

　小さな自分がなかなかの大作を作っていることに気付き、修は苦笑いする。間に合う気がしない。心配になった修は、美咲紀も呼びつつちび修を手伝うことにした。

「俺も手伝おう」

　手を泥だらけにしながら、城造りを進める四人。ちび美咲紀も楽しんでいる様子で、時々独創的なパーツを作って城に付け加えていくようだった。

「意外とシュー君もこういう土砂塗れな遊びも好きだったですね」
「まあ、な。美咲紀は」
「私は大好きでした！　今も好きですとも！」

　体を動かすのはとっても気持ちいいのです。美咲紀は笑って、完成しつつある城を見た。

「さあ、最後は自分でやってごらん」

　修に促されて、ちび修が頂点を作り上げた。完成した城を見て、修は思い出したのかカメラを取り出して、写真を撮る。

「四人並んだ写真も撮るです！」

　美咲紀の提案に修も同意して、四人の写真が撮られた。たとえデータに残らなかったとしても、切り取られた一日は修と美咲紀の記憶に深く刻まれるだろう。
　公園に差し込む夕陽が、四人と砂の城を優しく照らしていた。