南校舎の階段、午後三時。｜リアクション

南校舎の階段、午後三時。

【エピローグ】

　やがて、修と美咲紀、圭花と美弥子の四人も噴水の傍へとやって来た。
「本当に見つかるとはね」
　ペンダントを見せられ、言ったのは圭花だ。
「栞や写真、手紙ではなかったんだな」
　修が、意外そうに言う。
「刻まれた文字はきっと、頭文字だと思うわ」
　桜の言葉に、修はそれを手に取って眺めた。
「……Ｗは、生き残った方の少女の頭文字だ」
　その言葉に反応したのは、圭花だった。
「死んだ方の少女の頭文字は、Ｓ？」
「ああ」
　うなずく修に、圭花と美弥子は思わず顔を見合わせる。
「……ヒントとしては、微妙なものだったわけね」
　圭花が苦笑して、肩をすくめた。
　そして、改めて修を見やる。
「それで、どういうことなの？」
　修は、少し考えて答える。
「これは憶測だが……二人は互いの頭文字を刻んだペンダントを『約束のシルシ』として交換した。だが、仲違いしたあと、一方はそのシルシをこの噴水の下に隠した。いわば、封印したんだ。そして、事故に遭い、死んでしまった……」
「だから、私たちに探させたのですか？」
　美咲紀の問いに、修はうなずいた。
「その可能性はある」
　そして彼は、改めて一同を見回した。
「俺は、生き残っている方に、このペンダントを渡してやりたいと思う。もし任せてもらえるなら、俺が彼女に会いに行こうと思うんだが」
「私は、それでいいと思うわ」
　圭花が、軽く挙手してうなずく。
「私も異議はないのです」
「賛成なのだ！」
　美咲紀と真央が言うのへ、桜もうなずいた。
「……きっと、その人も喜ぶと思うわ」
「私も賛成だわ」
　美弥子も言う。
「わかった。じゃあ、そうするよ」
　修がうなずき、ペンダントを元の箱に収めると、大事に自分のカバンに入れた。
「さて。……じゃあ、そろそろ帰るか」
　呟いて、修は真央と美咲紀をふり返る。
「何か食べて帰るか」
「賛成なのです」
　嬉しそうに修の横に並ぶ美咲紀。
　対して真央は。
「真央ちゃんは、帰ってさっそくＮＭＲ用にまとめるのだ！　修ちゃんも美咲紀ちゃん、圭花ちゃん、美弥子ちゃんも、バイバイなのだ～！」
　言うなり、脱兎のごとく駆け出した。
「後木さんらしいわね」
　それを見送り、圭花が笑う。
　その時、美弥子がふとあたりを見回して、気づいた。
「八十八旗君は、どうしたのかしら……？」
「そういえば……」
　圭花も気づいて、周囲を見回すが、信彦の姿はない。

　そのころ信彦は。
　メッセージがラブレターだと信じ込んだまま、『約束のシルシ』を探して、図書室の中を経めぐり続けていた――。

　後日。
　修は少女に連絡を取り、会ってペンダントを渡すことに成功した。
　涙と共にそれを受け取った彼女に、修は発見のいきさつを話し、死んだ少女がシルシに想いを込めて、貴女に届けたかったのだろう――と告げた。
　そのあと、彼女は修に誘われて南校舎の階段へと向かったが、その胸元にはＳの文字を刻んだ、同じペンダントが揺れていた。

　その翌日。
　修が女性に会いに行った顛末も含めて、今回の『約束のシルシ』探しの件が、真央の手によってＮＭＲにまとめられた。

　こうして、『約束のシルシ』探しは幕を閉じたのである――。

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あとがき

担当マスター：織人文
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マスターの織人文です。
参加いただき、ありがとうございました。

今回はリアクションを書きながら、もうちょっとわかりやすいガイドにするべきだったと、反省しきりでした。
特に、『約束のシルシ』をなぜ探さなければならないのか、についてはもう少しガイド本文で少女たちのいきさつを書いておけばよかったなと思ったりしました。

そんなこんなで仕上がったリアクションですが――少しでも楽しんでいただければ、幸いです。

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