ぱっちん！　ぱっちん！！　ぱっちん！！！｜リアクション

ぱっちん！　ぱっちん！！　ぱっちん！！！

●マッドティーパーティにようこそ

　所変わって　コスプレ部の部室。
　七音侑は葛城璃人が用意してくれた、マッドハッターをイメージした衣装を着込んでいた。
　ぴったりとした細身の黒いシルエットに、段フレアーのスカートがぱっと広がれば、そこからすんなり伸びた侑の脚線美を引き立てる。
　そうして胸元に赤いリボンタイをつけて、薔薇飾りがついた小さなシルクハットを斜めに被れば、いつもの侑とはまるで別人のよう。
「にゃはー！　これいい！　かっくぃー！！」
　これには侑も、ご満悦。
　着替え終わると、くるるんと回ってポーズを決める。

「えっと葛城さーん？　これ間違ってない？」
　試着室のカーテンで、下半身を隠した霧谷朧が、戸惑った様子で半身を覗かせた。
「えー？　間違ってなんかいませんよー？　それしかないんでー、諦めてくださーい♪」
「いやいや、それしかないっておかしいんよ？！」
　朧には、きゃぴるんと微笑む璃人の後ろに、黒い尻尾が見えるようだ。
　衣装ケースに、きっと色々隠してあるに違いないのに、強く出れないのが悲しい。

　璃人が朧に差し出したのは、襟元に鈴の付いたリボンが可愛い、ゴスロリ衣装。
　ピンク×紫のボーダーストールは、チェシャ猫風である。
　こっそりと気づかれないように一緒に渡した、ふんわりパニエのスカートを穿けるのも、痩身の朧だからこそ。
「思ったとおりピッタリですね。りぃの見立てに、間違いはないのですっ！」
　ふっふーんと笑う璃人は、ロココ調を意識したアリス風エプロンドレス。
　リボンやレースがふんだんに使われ、一般的なアリスの衣装よりも凝っていて、璃人の繊細な愛らしさに花を添える。
　ハニーブロンドの髪には、黒レースのリボンのカチューシャを。
　エナメルの靴を履けば、どこからどう見ても、かわいい女の子で。
　三人がそろえば、物語の１ページのよう。

「りぃちゃんのも可愛い！　写真撮るに☆
　朧先輩どうしたんですかー？　先輩も一緒に撮りましょうよー」
「そうですよっ、りぃが見立てたんですから、もっと自信を持って！」
「ま、まつんよ、七音ちゃん！」
　マッドハッターとアリスに腕を引っ張られ、試着室から強引に引きずり出されるチェシャ猫。
　病院を嫌がる猫を髣髴とさせる。
「先輩すっごく似合ってる！　コレは撮らなきゃに」
「写真とか、ちょ、えー？！」
「いいからいいから♪」

　ピロりん♪

「いいにゃ、いいにー」
「わぉ♪　いいですねー、これ引き伸ばして飾りましょー」
「勘弁して欲しいんよー！」
　スカートなのを思い出し、内股になる朧。
「さて、せっかくアリスご一行様になったんですし、始めちゃいましょうか。マッドティーパーティ♪」
「うにっ！」
　璃人が、とぽとぽとティーポットにお湯を注ぐ。
　朧の涙目の訴えは、聞き届けてもらえそうもない。

「はあ……色んな意味で、身体温まるんさね……」
　白いティーカップに口をつけたチェシャネコは、次の瞬間、あち！　と声を上げた。

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