NEKOJIMA GET BACK　ユメユメ事変・前編｜リアクション

NEKOJIMA GET BACK　ユメユメ事変・前編

■裏側のセカイ
　生徒会長が電話に出ない。
　八神修はため息をついてケータイ電話をポケットにしまった。
「生徒会の仕事をすっぽかすような人ではないんだけどな。急用か？　それとも……」
　フシギが日常茶飯事の寝子島である。
　またぞろフシギ現象に遭遇して手一杯になっている可能性もある。
　自分になにかできるだろうかと考えて、とりまねこったーを開いてみた。
「……ふむ」

　ササヤキが修におとずれた。
　図書室で大事な本をナイフで八つ裂きにする図書委員の未来を見た。
　修は生徒会室の外に出て、歩きながら思案する。
　今から家に帰って装備を調えれば万全だが、事態は一刻を争う。できれば校内で、理想を言えば道すがら手に入るものがいい。
　図書室までのルートをいくつか脳内の立体マップに描いてから、唸る。
　通常教室ばかりだ。美術室や技術系の教室があればよかったが、この際贅沢は言うまい。
「失礼するよ」
　誰も居ない教室の扉を開き、つかつかと入っていく。そして、掃除用ロッカーの扉を開けた。

　それから三分もしないうちに。
　がらり、と図書室の扉が開いた。
　図書委員の女子が振り向く。ナイフを握っている。
　修はまず金属製のバケツを投げてパーツ分解。頭にかぶせるようにして軌道を操作する。反射的にナイフで払う図書委員の女子。
　が、それこそが修の狙いであった。
　素早く距離をつめ、分解したモップの柄で足払いをかけた。
　なんか美咲紀が必死でこのフォームばかり練習していたのでなんとなく覚えたものである。それがマンガキッカケで練習しはじめた現代薙刀術だとは知らなかったが。
　相手が転倒した所に、ビニールヒモを高速展開。
　身体にぐるぐると巻き付けると、ほどけないようにとくしゅな結び方で固定した。
「さて、こんなところか」
　口を塞がれむぐむぐともがく図書委員の女子を見下ろして、修は額の汗をぬぐった。
　だがこんな所を他人に見られるのはよろしくない。図書準備室に引きずり込んで、様子をみることにした。

　ねこったー開く。
「他にも同じ症状の人がいるらしいな。となると彼女だけの精神疾患というわけじゃない。病気と呼ぶにも無差別かつ小規模すぎる。フシギ現象の一環なのは間違いないけど……さて」
　修はこめかみに指を当て、次の『ササヤキ』が来るのを待った。というより、来ることが予想出来ていたという方が、正しいだろうか。

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