＜七福猫シリーズ＞弁天猫を探せ編｜リアクション

＜七福猫シリーズ＞弁天猫を探せ編

● エピローグ

「弁天猫さん……可愛い……！」
「みつかってよかったわね」
　見つかった弁天猫を囲み、夏朝も日和も、心からの安堵を口にした。
　瑠奈と瀬莉は弁天猫を撫で、博美と亮も満足気な表情だ。
　オルカと悠月も、輪からはすこし離れたところで肩を寄せ合いながら笑みを浮かべている。
「弁天、見つかったみたいだね、悠月。俺たちの歌も届いたみたいだよ～」
「そうだな。音楽の神様に、聞いて貰えたかもしれないと思うとすこし嬉しい気分だ」
　綾花は弁天猫に目立つように猫の柄のリボン括っていいか聞いて、それをストールのように巻きながら、
「恵比寿様が心配してましたよ」
　と告げた。
　――恵比寿……ああ、えびちゃん！　懐かしいわね。会いたいわ。
「駅前にいますから、あとで会いに行きましょうね」
　修は自己紹介して出会いを喜んだのち、ほかの七福猫の居場所を尋ねたが、弁天猫は知らないようだった。
「皆に見てもらえるよう、弁天猫さんにお社を作ってあげたいんだけど……希望の場所とか、あるかな？」
　夏朝はおずおずと申し出る。
　――あら、うれしい。ここの景色が好きだから、いままでいた土産物屋の近くにお願いできると嬉しいわ。
　それを聞き、さっそく頭の中でそろばんを弾き始める修。社を作るのに寄付を募ってもいいかもしれない。
「あ、そういえば……」と夏朝は焦った様子で言う。
「恵比寿猫さんもお社がない！　後で作らないと……材料費足りるかな……？」
　すると、みんなの脳裏に、恵比寿猫の声がした。

　――弁天を探し出してくれてありがとうのう。わしは社はいらんぞーい。

「――だってさ」
　刀はみんなを見回すと、最後に記念撮影をしないか、と持ち掛けた。
「今後皆がこの格好をする機会はあまりないだろう？」
「いいですね！　じゃあカメラは私のを使いましょう。あとで寝子高新聞に載せても構わないですよね？」
　美咲紀はちゃっかり掲載許可もとって、近くにいたおばちゃんに撮影を頼んだ。
「はいはいみんな、寄って寄って」
　おばちゃんがチャキチャキ仕切ってくれたので、皆は鳥居の前にぎゅっと寄る。
「撮るわよー。はい、チーズ！」
　フラッシュが焚かれる。弁天姿のみんなが、一枚の写真の中に収まる。

　楽しそうな笑顔の人々を見ながら、サキリはひとりごちる。
「たまにはこういう神魂現象も活気があって、商店街にとっては良かったんじゃないかな？」
　チン、とトライアングルひと鳴らし。さて、これを返しに行こう。
　サキリはそっと物陰に隠れ、＜斬空赤刃＞を発動させた。

◇

　さて、この騒動からしばらくして。
　寝子高新聞の片隅に、参道商店街の一角に、白木造りの小ぶりな社が設置されたニュースが載った。
　参道商店街の人々の寄付によってつくられた社は、屋根付き観音開き。
　中に手のひらサイズの弁天猫がご神体として鎮座している。
　お参りすると音楽と勉学に加護があり、歌や音楽を奉納すると大いに喜ぶという話で、参道商店街の人々をはじめ学生たちも、時折お参りしている姿が見られるようになったという。
　旧市街住まいで、寝子島神社の境内での剣術稽古の行き帰りに定期的にお参りするようになった刀は、手を合わせながらこんなことを思うのだった。
「他にも同じ思いをしている七福猫がいるなら見つけ出さないとな」

＜了＞

このページにイラストを設定する

あとがき

担当マスター：笈地行
ファンレターはマスターページから！

ご参加ありがとうございます。笈地です。
なんか今回、すごくＰＢＷっぽく書けたなーって感じがしました。
いろんな方のいろんなアクションが絡み合ってひとつになっていく感じが強かったといいましょうか……
音楽の力かもしれません。

そんなわけで、音楽の神様・弁天猫の加護を受けたリアクションをお届けいたしました。
今後もほかの七福猫が出てくるシナリオがあるかと思います。
それは、わたし以外のマスターさんになるかも？　どうぞお楽しみに！

それでは今回はこれにて。またのご縁を楽しみにしております。

↑ページトップに戻る