【星幽塔】最終決戦！すべての希望に火を灯せ！｜リアクション

【星幽塔】最終決戦！すべての希望に火を灯せ！

「つぎはこっちじゃーっ！」
「わわっ！」
　衛が再び強襲を仕掛ければ、ステラがそちらへと移動する。気持ち悪くなってきたアカリではあるが、そこをぐっと堪えて敵を観察した。一瞬、腕が自分達へと伸びた気がしたが、それは彼らをすり抜けてアヴィケンナへと迫る。
「そうはさせないよ？」
　ロベルトが手をかざし、魔土の力で壁を作れば手が跳ね返される。彼が無事である事をちらり、と見、アカリは内心で安堵の息をつくが、目に入ったのは己めがけ落ちてくる水晶の塊だった。
「邪魔！」
　杖を握り締め、激流をもって水晶をはじくアカリ。水晶と水の煌きが弾け、飛沫が風に乗って降り注ぐ。
　桜はそんな中でも隙間を見て、ボウガンを唸らせる。今、彼女に出来るのは巨人の動きを可能な限り予測し、未来位置へと狩人の光で強化した矢を放つ事だけだ。
　月が鋼糸で虚空に舞い、銀の使い魔が巨人を襲う。巨人の表面をすべるようにステラは動かされ、攻撃の盾にされるも月もフローレンスもぎりぎりで止める。
　アカリはその隙に激流を巨人にぶつけ、その勢いで光の獣が距離を取る。衛はコントロールしながらも、落ちてくる水晶をフライパンではじいていた。

　その間も、巨人の腕はアステリズムを中心に襲い掛かっていた。フローレンスには日和と高久が、アヴィケンナにはロベルトがついている為傷は無い。だが、フローレンスの警護に２人についた為、基本的にシドニウムにつく者がいなかった。
（これじゃまずいよね）
　ロベルトは己の鞄を漁るとシドニウムへと【かえんびん？】とCH――ほろ苦いチョコレートの風味がする、三日月型の錠剤――を手渡す。
「これ、使ってください、シドニウムさん」
「いいのか？　これは……爆薬？」
　シドニウムが受け取った【かえんびん？】を手に問いかけるとロベルトは情報を確かめる。
「中身は炸裂イモ１対テルミツ唐辛子２の割合で入れてあったかな。少しでも役に立つならいいけど……」
「それは面白そうな組み合わせだな。ありがとう、早速使わせてもらうよ」
　ロベルトへと礼を述べたシドニウムはそこへと襲い掛かってきた腕へとそれを投げる。音をたてて爆発する【かえんびん？】がその腕を吹き飛ばす。だが、音も無くすぐさま生え変わり２人へと襲い掛かる。
「危ない！」
　ロベルトはシドニウムを伏せさせ、すぐさま魔土の力で壁を作る。荒れ狂う腕がその壁を掠ってアヴィケンナへと襲い掛かれば、ロベルトは「させるか」とダッシュする。
「ロベルトくん！」
　日和が魔風で腕の軌道を反らそうとするが、効果が薄い。僅かに砂煙で目標をずらさせるぐらいに留まっている。高久は引き続き襲うもう一本の腕からフローレンスを庇うので精一杯で動く事ができない。少しでも間があれば、彼は想った言葉を対象にした人物に伝える事ができる『心の打鐘』が使えたのだが、指を差す時間も、拳を合わせる時間もない。
　シドニウムが爆薬を投げつけて気を引こうとするも、巨人は蹴ってそれを回避する。
　他のメンバーも、巨人の気を引こうと時間差攻撃を繰り広げるが、その腕は執拗にアヴィケンナへと襲い掛かろうとしていた。
「おりゃあああっ！」
　恐らく、一生でもこんなに早く走った事は無いかもしれない、と後から振り返って思うほどのダッシュ。そのお陰か、間一髪の所でアヴィケンナを庇う。だが、鈍い衝撃を２人が襲った。どうやら、弾き飛ばされてしまったらしい。
（！！）
　砂煙が立ち、ロベルトが僅かに呻く。だが、彼は腕の中のアヴィケンナに大丈夫か、と問いかけた。
「済まない……」