【星幽塔】最終決戦！すべての希望に火を灯せ！｜リアクション

【星幽塔】最終決戦！すべての希望に火を灯せ！

承：届かぬ手、募る焦燥……その果てに

　巨人へと５人が攻撃し、アステリズムも守られている中。夏朝は額に浮かんだ汗を拭いながら様子を伺っていた。頃合いを見計らい、月と共に攻撃へ転じてはいたが、巨人にも隙が無かった。
「……ステラちゃんとオーブの破片を同時に得るのは難しそうかな」
「そうだねぇ」
　相槌を打ったのは、円。彼女はタッグを組んだ真白の武器に炎を纏わせることに集中しつつもにこやかな笑顔を忘れない。
　その真白はろっこん『鋼の如く』で硬化した耐火布のリボンを手に巨人の腕などを攻撃していた。そうしながらも、義眼に宿した呪術の力で再生と速度の阻害の呪いを齎していく。
　耐火布のリボンは円の魔火を受けて赤々と光り、腕が傷ついていく。
「「炎と呪が交わって最強（中二）に見える（となる）！！」」
　真白と円が叫び、巨人が腕の痛みに吠える。その横顔に頼もしさを感じながら、彰尋はステラへと治癒の力を注いでいた。だが、反応が薄い。
（体力自体はそんなに減っていないのかもしれない。傷も今の所なさそうだ。だが……）
　巨人へと攻撃している月たちへと治癒を施しながらも、彰尋はちらり、とシドニウムをみた。すると彼は僅かに表情を険しくし、心臓を押さえているではないか！
「シドニウムさん？！」
「私は大丈夫だ。他の仲間たちを治療してくれ」
　シドニウムはすぐに立ち上がり、爆薬を巨人の足元めがけ投げつける。だが、疑問に思った彰尋の目に入ったのは、頬に傷を負ったステラだった。喧騒で聞こえなかったが、水晶の破片がステラに掠めてしまったらしい。彰尋がすぐさまステラを治癒し、呼吸を整えるシドニウムに駆け寄り、治癒の力を施す。
（ステラが危ない目にあうことが、カトルさんにはとても辛いのか……）
　僅かに呻くシドニウムへと星の力を流す彰尋。だが、僅かに目の前が暗くなったような気がし、内心で焦る。
（これって……精神力を使いすぎたって事か？！）
　夏朝は、その様子にいてもたっても居られず、懐からサファリリオレンジドロップを取り出す。それを彼の口へ含ませながら、シドニウムへ問いかける。
「気になったんだけど、シドニウムさんの星の力って、何？」
「かに座固有の星の力は、『塔の再生』だ。この命を削って、傷ついた塔を癒す。それが、かに座のアステリズムの使命」
　シドニウムのその言葉に、彰尋と夏朝は思わず息を飲んだ。だが、シドニウムは厳しい表情のまま言葉を続ける。
「私が持つ星の力よりも、命がけの力はある。……それは、絶対に使わせてはいけない。あぁ、絶対にな……」
　シドニウムはそういうと、力強く手を握り締めて立ち上がった。夏朝はもう大丈夫かな、と思い戦場に戻るも、シドニウムの言葉が引っかかっていた。
「君も、他の仲間のほうに。……ありがとう。星の滴がなければ、この鞄からとって飲んでおくんだ」
　彼の言葉に、彰尋は「気持ちだけ受け取っておきます」と言って自前のそれを飲んだ。

　荒野の石柱が、振動に震える。巨人の起こしたそれを月は一時虚空に飛ぶ事で避け、円と真白を初めとする地上の者たちもどうにか踏ん張って堪える。
　だが、振動によって石柱より水晶が零れ落ち、宙に浮かぶ石に当たって煙る。それを払おうと遥斗と日和が魔風の力を放てば、渦巻く煙と共に水晶がはじかれる。
　その間を縫って伸びる腕がアヴィケンナとフローレンスに襲い掛かるも高久が手を蹴り上げ、ロベルトが魔土の壁で身を守る。時折ぱらぱらと音を立てて水晶が落ちるが、それはいたし方が無い、と割り切るしかなかった。
　煌く水晶が降り注ぐ中、光の獣が虚空を舞う。