【星幽塔】最終決戦！すべての希望に火を灯せ！｜リアクション

【星幽塔】最終決戦！すべての希望に火を灯せ！

【緑の扉】暗号

　さらに同じ頃、北のエリアでは、

「久しぶりに呼ばれたと思ってみたら――またえらいときに呼び出されたもんだねぇ」

　七峯亨は、飄々とした口調でそう言い放ち、手にしたハルバートを振るって、眼前に立ちはだかる影のゴブリン達を薙ぎ払った。
「余計な厄介事はご勘弁――と言いたいところだが、ここで負けたら俺達の世界も……なんて言われちゃ負けるわけにはいかねぇな」
　ふっと息を吐くと同時に、気合一閃、ハルバートを振り抜く。
　影のゴブリン達が恐れ戦き道を開けたところを一気に駆け抜けて、大型弩砲へとたどり着く。
「さて。こいつを動かしゃ、あのでかいのを落とせると踏んだが……動かねぇなぁ」
　大型弩砲の操作盤のあれこれを動かしてみても、砲台はビクとも動かない。
　どうやらロックがかかっているらしい。
「何かそれっぽい文字が書いてあるにはあるが、俺には読めねぇし……」
　と、亨が困り果てていたところに、何者かの気配がやってくる。
「……よう。どうしてさっさと撃たないんだ？」
　やってきたのは、一向に動かない北の大型弩砲に痺れを切らして様子見にきたレグルス・シェルタンだった。
「……いや、撃ちたいのは山々なんだが動かないんだわ、これがね」
　亨が視線で物言わぬ大型弩砲を示すと、レグルスもそれにならってそちらに視線を送り、
「ほう。何か書いてあるな。『小人さん専用』？」
　と、何でもないようにその謎の文字列を読み上げて、小さく首を捻る。
「……小人さん、専用？　ああ、なるほどなるほど」
　亨は、得心がいったように何度も頷いた。
「……ん？　あんた、意味がわかるのか？」
　あまり暗号などといったものが得意ではないレグルスが、感心したように亨を見る。
「ああ。さっき、ちょうど小人さんなら通れそうな穴を見つけてね。きっとそこに何かあるんじゃねぇかな？」
　亨は、件の穴を指差してレグルスに言い、さらに自身には縮身の能力があり、それをコピーさせるから穴の中に同行して欲しい旨を申し出た。
「また穴の中でさっきみたいな文字とコンニチワってんじゃシャレにならねぇからな」
「いいぜ、望むところだ。だが、その間、こいつ（大型弩砲）の守りはどうする？」
　レグルスが亨と握手をして能力をコピーしつつ、そう不安を口にしたまさにそのとき、
「俺に任せとけ！　勇者の心得その７１、『勇者は地味な仕事こそ率先して引き受けるべし！』」
　と、ルーク・ポーラスターが自慢の剣を持ち上げて、大型弩砲の守り人役を申し出た。
　大型弩砲の守りも決して地味な仕事ではないと思われたが、それはそれとして、とにかくこれで守りも万端だ。
「ありがてぇ。よし、それじゃあ行くとするかねぇ」
「ああ」
　かくして、小さくなった亨とレグルスが、小さな穴の中へと向かうと――。
「……おいおい。小人さんだけじゃなくて、ちっこいゴブリンさんまでいるじゃねぇか……」
　その先にはまた大量の小さなゴブリンの姿があって、レグルスは曲刀の背でトントンと自分の凝った肩を叩いた。
　どうやらあのゴブリンを殲滅しなければ、小人の助力を乞うことは難しそうだ。
「厄介な役回りに巻き込んじまってすまないねぇ」
　ふぅと一つ息を吐きつつ、亨がハルバードを深く構える。獲物を握る両の拳から、きらりと癒しの光がきらめく。
「……怪我をしたら言ってくれ。俺がきっちり回復するからさ」
「そいつぁありがてぇ。それに、いいってことよ。俺も頭を使うよりは、身体を動かす方が性に合ってる性質でね」
　言うが早いか、二人が地面を蹴るとそれぞれの武器が小さな影を一瞬の閃きとともに薙ぎ払う。
　二人の猛者の縦横無尽な戦いぶりに、小さな穴の中で小さな住人達の歓声が沸いた。