【星幽塔】最終決戦！すべての希望に火を灯せ！｜リアクション

【星幽塔】最終決戦！すべての希望に火を灯せ！

【緑の扉】虎、とら、トラ

　メリィ・ランページとリリエル・エーテライトは、影の少女を目指して、ドラゴンザレスの背中を追っていた。
「こらー！　卑怯だぞー！　降りてきて、あたしと勝負しようよ！」
　メリィはハンドクローをぶんぶん振りつつ、上空の少女に呼びかける。
　が、影の少女はこちらを振り返ろうともしない。
「無視か！？」
　思わず突っ込むメリィに、リリエルがハッとした表情で前方を指差す。
「……メリィちゃん、影のゴブリンとスライムがまた来ます！」
「ああ、もう！　邪魔するなって言ってるでしょッ！」
　メリィが虎の爪を振りかざしてゴブリンを切り裂けば、リリエルが魔風の力でスライムを吹き飛ばす。
　二人の連携は息がぱっちり合っている。
　が、いかんせん数が多く、なかなか影の少女まで届かない。
　さらに悪いことに、
「……っ！？」
　そこで、メリィの進撃がピタリと止まった。
「……メリィちゃん！？」
　何事かと、リリエルがメリィの視線の先を目で追うとそこには大きな体躯をした影の虎が数匹こちらを睨みつける姿が。
「うう……。あいつら、なんかヤダ……」
　やはり同じ虎同士だと気が引けるのか、メリィの戦意が減衰していくのが見た目にもわかる。
　だが、影の虎はそんなメリィの様子などお構いなしに、地面を蹴ってこちらに突っ込んでくる。
「く、来るなぁっ……！」
　メリィが魔火を乱射するが、精度を欠いている。
　虎は火をくぐり、メリィに肉薄する。丸太のような腕と、その先の刃物のような爪が閃く。
「メリィちゃん、危ない！」
　リリエルが急降下して、メリィを抱きかかえるようにしてその攻撃を回避した。
「……だ、大丈夫ですか。メリィちゃん」
「……う、うん。ありがと、リリエル」
　リリエルに礼を言いつつ、メリィは額に浮かぶ嫌な汗を拭う。やはりあの虎はどうにも相性が悪い。
「しからば、ここは拙者に任せて先に行くでござる」
　と、そこでメリィとリリエルの目の前にぬらりとその姿を現したのは、刀を下段に構えた三峰徹之進だった。
「……え？　ちょ、ちょっと待って、あいつ、見た目以上に速いんだからっ！」
「問題ないでござる。拙者、こんなナリでも、天から使わされた大狼の血を引いているのでござるよ。力だけの猛獣や狡いものにはこれで充分でござる」
　ニヤリ、と口の端を上げると、もう鉄之進は飛び出している。
　理性と引き換えに、己の裡に眠る獣性をほんの少しだけ解放する。
　思考が鈍くなる。そのぶんだけ、反応速度が速くなる。
　影の虎が踏み込んでくる。
　徹之進は半歩だけ横に身を逸らし、その攻撃を紙一重で避ける。
　そして、刺突。
『!?!?!?』
　愛用の霊刀の刀身が半分ほど影の身体に埋まる頃には、すでに影の虎はその動きを止めている。
　引き抜き、血を振り払い、また構える。
「さあ、次に拙者の刀の錆になりたいのは何奴でござる？」
　くつくつと笑う徹之進に、さしもの影の虎達もじわりと一歩その身を引いた――まさにそのときだった。
　ひゅううう、と空を裂く『何か』が、西の空から飛来し、そのまま二匹のミニドラゴンザレスを貫通して、ドラゴンザレスに突き刺さった。
　大型弩砲の矢が命中したのである。
　ドラゴンザレスは鋭い悲鳴を上げて、地面に墜落する。
　ドゥンと轟音を立てて地面が揺れる。
『……！？　ちょっとォ……！？　なんてことしてくれちゃうのォ……！？』
　地に墜ちた竜の身体の上で影の少女がめずらしく慌てふためいている。
「……メリィちゃん！　今の内です！」
「うん！　突っ込むよ、リリエル！」
　それは、まさしく決着をつける千載一遇のチャンスである。
　メリィとリリエルは、地に墜ちたドラゴンザレスとその上の少女を目指して、大地を蹴る。
　が、そこにまたどこからともなくウヨウヨとゴブリンの影が押し寄せる。
「……ああ、もうっ！　いったいどれだけ湧いたら気が済むのよっ！」
「メリィちゃん、私が風で道を開けます！　雑魚は気にせず、影の少女だけに意識を集中してください！」
「……わかった！　信じてるよ、リリエル！」
「任せてください！　がんばリリエルです！」
　かくして、冒険者達の反撃が始まる。