【星幽塔】最終決戦！すべての希望に火を灯せ！｜リアクション

【星幽塔】最終決戦！すべての希望に火を灯せ！

【緑の扉】西の空の攻防戦

　教会に向かった一行が、大型弩砲のロック解除に動き出したのとほぼ同じ頃。
　廃墟の中央から西へ向かう空と地上ではドラゴンザレスと冒険者達の激しい攻防戦が繰り広げられていた。
「ほらほら、そんなんじゃ俺とオブシディアンには掠り傷一つつけられないぜ♪」
　騎士の光を宿した手で愛馬を颯爽と操りながら、鎌八まもるは少しでもドラゴンザレスを翻弄してやろうと全力で地上を駆け抜けていた。
『アハァ……♪　ちょこまかと、うっとォしいわァ……♪』
　楽しげなのか、不愉快なのか判断に困る声音で、影の少女がドラゴンザレスに攻撃を指示する。ドラゴンザレスはあまり知能は高くないのか、ただ影の少女の言いなりになって、地上を走るまもるに向かって黒い火の玉を連続発射する。
　まもるは一気に加速して、ドラゴンザレスの攻撃を振り切りながら、ちらと隣を走っているはずの仲間――シダ美穂戸の安否を確認した。大丈夫。シダは、馬に乗って走るまもるのすぐ隣を、ケンタウロス状態で難なく併走している。
「まもる。前。影のちっこいの来てる」
　と、そんなシダが、ケンタウロス状態でオブシディアンに併走しながら前方を指差す。
「ありゃ。さすがの俺とオブシディアンでも前方のゴブと後方の竜を同時にさばくのはちょい厳しいかな……」
　と、まもるが冷汗を流しながら、いったん馬の速度を緩めたそのときのこと。
「……では、前方のゴブリンは僕がなんとかしましょう。貴方がたはドラゴンザレスの相手を」
　どこからともなく影のように現れたレント・イナホが馬上のまもるにそう言葉を投げかけた。手には苦無。影を前にして落ち着いた――いっそ無表情とも言える顔つき。それはまるで忍者のようで、『頼りにして良さそうだ』とまもるとシダは思う。
「オッケー、じゃあ前の連中はまかせた。俺とシダぼんは、ちょっくらゴンちゃんをからかってくるわ」
「ヴァン。シダ、あいつ、おちょくる」
　馬首を巡らし、ドラゴンザレスに向かって迷いもなくとって返す二人を見て、レントは感心と呆れがないまぜになった吐息をつく。
「勇ましいことですね……」
　と、そんなイナホに前方から影のゴブリンが迫る。
　一人になったところで、ゴブリン達は彼を格好の獲物だと判断したようだ。
　だが、
「――では、僕は、小さな影の掃討に専念させてもらいましょう」
　それこそが、イナホの狙いだった。彼は、すっと息を吐くと同時に、手にした苦無を魔風の光に乗せて閃かせる。
　イナホの持ち味は、スピード。
　そして、それを最大限に活かし、敵をかく乱するならば多対一がいい。
『!?!?!?』
　次の瞬間には、イナホの手から消えた苦無が前方にいる影のゴブリンの眉間に突き刺さっている。その場に倒れて、動かなくなる。
　ざわざわ、と影のゴブリン達に動揺が広がる。
　その隙に、イナホは群れのただなかへ飛び込む。
　倒立し、足を独楽のようにまわして強烈な蹴りをゴブリン達に次々と叩き込む。
　そして、
「これで終わり……です」
　怯んだところへ、一気に踏み込んでとどめ。
　その危険を省みない戦いぶりは彼自身もまた充分に勇敢であることの何よりの証左だった。