【星幽塔】最終決戦！すべての希望に火を灯せ！｜リアクション

【星幽塔】最終決戦！すべての希望に火を灯せ！

【第六階層】滅亡を望むもの

　ラプターとともに空と雲海の広がる第六階層にやってきた深縹露草は、墨色の瞳を瞠った。
　あちこちから立ち上る煙や火の手。
　逃げ惑う人々と追いかける人々。
　おそらく第一階層も第五階層も似たような状況に陥っているのではあるまいか。
「ひどい……」
　ラプターによると、現在、第六階層は大勢派の『第六階層復興委員会』と、少数派の『過激派義勇軍』という２つの派閥に分かれてしまっているという。かつては魔女を憎み、義勇軍の一員であったラプターは、いまは復興委員会側の人間だ。だが、過激派義勇軍の気持ちもわからぬではないと唇を噛む。家族や友人を殺された人々にとって、かつての圧政を許すというのは並大抵のことではないのだ。くすぶり続けている熾火は、ちょっとしたきっかけでふたたび猛火に変わることもある。

　ラプターの話に同情しつつも、露草は一方で、全く違うことを考えていた。
　最終決戦のさなかというこのタイミングで、こんな混乱が三か所で起こるとはあまりに不自然ではないか。
　――火種に火をつけて回ってるやつがいる。
　修の言葉が脳裏を過ぎる。
　そうだ。
　そして自分なら、そいつを見つけ出すことが出来るのではないか。
　露草はラプターに頼み込んで、もっとも争いの激しい「渦中」の場所へと案内してもらった。
　露草は考えていた。
　火種に火をつけて回るようなやつは、自分の熾した火の燃え盛るのを見ずにはいられないだろう、と。
　露草は心を落ち着けて、メモ帳を取り出すと、そこに炎を模った紋章を描く。
　指定した条件にあてはまるものに、描いたのと同じ紋章が光り輝き出現するというろっこん『我が紋章は、光り輝く道標』。いまはこれだけが頼りだ。
「ラプターさん、何かが光ったら教えてください」
　紋章を描き終えると、露草は怒りの気持ちを抑えて念じた。

（星幽塔の滅亡を望むものよ……光れ！）

　その途端、ラプターは、事態を見守る民衆の中で何かが光ったのを見た。
　彼の指さす先、黒っぽいローブを纏った小柄な男と目が合う。
　その胸元に、赤々と炎の紋章が光り輝いている。露草は叫んだ。
「その男を捕らえてください！　星幽塔の滅亡を望むものです！」
「おおっと」
　男――骨削瓢は愉快そうに口の端を歪ませた。
「まだ捕まらないよぃ」
　瓢は独楽回しの素振りをすると、自分のまわりに局地的な竜巻を起こし、掴まえようとする人々を引き離す。
「待ちなさい！　第一階層も第五階層も貴方の仕業ですか！？」
　露草の声に、瓢は高く嗤った。
「あーっはっは！　ご明察！」
「なぜこんなことをするんですか！」
「おたくの質問に答える義理はないが、あっしを見つけ出した努力に免じて教えてやろう。あっしの目的は鈴島の上空に浮遊する星幽塔を地上に落とし、大破壊を引き起こす事。何故？　面白そうじゃあないか！」