【星幽塔】最終決戦！すべての希望に火を灯せ！｜リアクション

【星幽塔】最終決戦！すべての希望に火を灯せ！

「落ちなさいっ」
　伸びるもう一本の腕はオートマータと桜の精密射撃によって千切れ飛び、足はシドニウムが投げつけた爆薬と【かえんびん？】によって粉砕される。だが、ゴーレムが巨人の倒れる速度をどうにか抑えてくれていた。
「まだまだだよ！」
　反撃できない巨人へと、真白が巨人へとリボンを伸ばす。それをろっこんで硬化し、ゴーレムのフォローをする。
「苦しいのか？　それももうすぐ終わるぞ！」
　ダガーを突き刺し、彰尋が震える巨人へと叫ぶ。そこに、月と夏朝の影が落ちる。２人が巨人の額に届く距離へ迫ったのだ。
「これで、最後に」
「一緒にやろう！」
　月と夏朝が、魔火と魔風の力を同時に使ってオーブ周辺を抉ろうとする。だが、悪あがきなのか、巨人の身震いによって手が届く前に落下してしまう。だが、その頭上高くに、衛と光の獣の姿が！
「この……っ！」
　獣から飛び降り、流星のフライパンを思いっきり巨人の頭へ振り落とす！

「正義の鉄槌流星パンチをくらえ！」

　派手な音を立てて巨人に落とされるフライパン。パンチではないが強烈な一打が、確かに巨人を怯ませる。そこへ、迫る紅蓮の翼……円だ。
「お前をぶっとばしてよぉ……」
　紅蓮に燃える拳。円はそのオーブの真下めがけ、勢いよくそれを突き出す！

「ステラちゃんに、チョコ食わせるんだよぉ、塔製のよぉ！！」

　彼女の情熱が、巨人の額にめり込む。同時に滑り込む、青いオーブの破片・『ブルゥ』。円は慌ててそれを手にすると、高々と天に掲げた。
「やった……っ！！」
　だが、油断した彼女は急に目の前が暗くなる。逆噴射していた炎が消え、オーブの破片を抱えたまま、円は墜落する！
「危ねぇええ！！」
　衛が光の獣を駆り、どうにか円をキャッチする。と、ステラとオーブを奪われた巨人は、一度大きく震えたかと思うと……音も無くその場にゆっくりと崩れ落ちた。
　砂のように、いや、灰のように滑って、水晶の光に煌いていく。だが、その中から現れたのは、何かの破片と思われるようなモノだった。
（……？）
　それに首をかしげたアカリたちであったが、それも広がった巨人の残骸と共に解けるように消えていった。
　後に残り広がった静寂。誰もが、夢のような一瞬に、言葉を失っていたのだ。
　それを打ち破ったのは、高久のろっこんにより目覚めたステラだった。精霊は、ふわりと舞い上がると、うっすらと涙を零して一礼した。
「みんな……ありがとう、なのっ！　心配かけてごめん、なの！」
「いや、ステラも皆も無事でよかったよ」
　ふらふらな状態の彰尋が、柔らかな笑顔でそういった。夏朝も月の肩を借りて歩くのが精一杯だし、高久は決着がつくと共に倒れたフローレンスを支えている。
　緊張から解き放たれた桜が座り込んでしまい、遥斗に手を借りて立ち上がる。日和とロベルトはそれぞれアヴィケンナとシドニウムの無事を確認し、安堵の息をついていた。
　そんなロベルトはアカリに１つウインク。アカリもまた、笑顔でそれに応じる。衛は光の獣の頭をなでて労を労い、真白はふらふらの円を抱きしめて喜びあう。

　喜びを分かち合うステラと１５人であったが、ふいにステラの表情が険しくなる。精霊は頭を押さえると、どこか不安げな声を上げた。最初に気づいた夏朝が問いかける。
「！？　どうしたの？」
「油断できないの。オーブを狙っているいやーな想いを感じるの……」
　ステラは、願うように言う。
「お願い、このオーブを……皆の希望を守って！」
　同時に、ステラから荘厳なオーラが一瞬だけ放たれる。冒険者とアステリズムの脳裏に、ステラの声が凛と響き渡る。
　シドニウムはステラの前に跪き、フローレンスは軽く頭を下げる。アヴィケンナは苦笑交じりに「ここまできたんだ、最後までやるさ」と頷く。冒険者達もまた、各々しっかりと彼女の目を見て頷いた。
「ステラ殿、確かに、承りました」
　シドニウムの声が、静かに了承を告げる。そして、３人のアステリズムと１２人の冒険者達は頷きあい、青の扉を潜るのであった。

【青の扉】（了）：ステラ奪還&オーブの破片奪取に成功！

衛「ところで、塔製のチョコって……？」
円「ホットカカオとマッスルバニラで作ろうと」
衛（……やたらと元気になりそうな組み合わせだな）