【星幽塔】最終決戦！すべての希望に火を灯せ！｜リアクション

【星幽塔】最終決戦！すべての希望に火を灯せ！

【緑の扉】嗤う少女と影の竜

　緑のオーブの欠片『ヴェルデ』が眠るという、その扉の向こう側には、うらぶれた廃墟が広がっていた。
　巨大生物に踏み潰された後であるかのような凄惨な姿の民家。
　無造作に散らばった、折れた剣やひびの入った盾などが置き去りにされた元商店風の家屋。
　そこには、寝子島の生活とは多少異質なものであっても、かつてそこで人の営みがあったことを思わせるには充分な痕跡を残した、紛れもない『廃墟』があった。
　そして、ただでさえ、物々しい雰囲気のその廃墟をさらに不穏にしているのが、その崩壊した建物の影からちらちらとこちらの様子を窺う『影』達の姿だ。
　ぱっと見まわしただけでも、ファンタジー小説にでも出てきそうなゴブリン型、ＲＰＧの雑魚的によくいそうなスライム型、動物園から今まさに逃げ出して来ましたといわんばかりの虎型などがいる。
　そして、極めつけが――

『キヒヒッ……。緑の扉の中へようこそォ……』

　クスクスと口を三日月型にして笑う、黒影の少女と、彼女が乗る影の大本が化身したと思しき巨大な影の竜の存在だった。
　

「ああぁー！！　お前ー！！　あの時の！！」
　琥珀色の目を見開き、声を張り上げたのはメリィ・ランページだった。メリィは、影の少女と浅からぬ因縁がある。
「あなた、第一階層でエンシェントエントさんを困らせてた影の少女ですね！」
　リリエル・エーテライトも、そう言って、メリィのそばに立つ。

『……キヒヒッ！　いつも邪魔してくれてありがとォ……。でもォ……それも今回でぇ……オ・ワ・リ♪』

　影の少女は、自分の乗る竜こそが自分達の主であり、その身体の一部の化身した姿であると自信ありげに語った。

『オーブの欠片はァ……もうこの子が食べちゃっタ……。あとはァ……あなたたちを亡き者にするダケェ……』

　少女の言葉に、一行は息を飲む。オーブの欠片はすでに彼らの手に落ちたらしい。
　だが、「だからどうした」と誰かが言う。「奪われたなら奪い返すだけ」とまた別の誰かが言う。
　想いは熱となり、そこにいた全員へと伝わっていく。
「……メリィちゃん、こういうときは『ここで会ったが百年目！』って言うといいらしいですよ！」
　リリエルが、こそりとメリィに耳打ちする。
「……そうだね！　よし、そこのお前！　ここで会ったが！　百年目ェ！」
　メリィは我が意を得たりとばかりに声を張り上げ、影の少女に宣戦布告をする。
「オーブの欠片は返してもらう！　そんでもって、あのときの借りもここで返すッ！」
　大地を蹴る。
　しかし、そこで彼女の目の前にゴブリンの影が大挙して押し寄せて、行く手を阻む。
　そんな影どもに自慢の爪を振り上げて、メリィは猛る。