レトロ喫茶「セピア」｜リアクション

レトロ喫茶「セピア」

◆　足並みそろえて（準備係編）

　まず、サクラとして外から見える席に誰かを座らせるという話になった。
「外から見て店がガラガラに見えれば、入ってみようって気にはならない。繁盛してるように見えれば、入ってみようかなとも思える。そういうもんだ」
　とは、夢呼談である。そして、これに立候補したのが修と美咲紀の二人であった。
「この店のホームページを作っている間は、他のことはできないからな」
「私も、全部のメニューを頼むわけですから、長時間お店にいますし……サクラにはちょうどいいはずです」
　自前のノートパソコンを手にした修と、同じく自前のデジカメとICレコーダーを準備している美咲紀。これを見て、ふと思いついたように師呉が言った。
「せっかくなんだし、撮ったメニューの写真をホームページにも掲載してみるのは？　デジカメのデータなら、すぐパソコンに取りこめるぜ」
「それはたしかに、良い案かもしれないな。サイトを作るにしても、アイキャッチになる画像が必要だから」
　修がうなずき、美咲紀が笑みを浮かべる。
「そういうことなら、ばしばし写真を撮るのですよ！」
　デジカメをかまえた美咲紀は、運ばれてきたばかりのホットサンドにレンズを向け、ぱしゃりとシャッターを切った。

「それはそうと、今日は宣伝用のチラシを配る予定なのですが、そちらはどうされますか？」
　アケーチの問いかけに、師呉が「うーん」と首をひねる。
「俺としては、せっかくレトロな雰囲気で良い感じだから、そこを全面に出したチラシとか作れればいいなって思うけどな」
「そこは俺も同感。レトロな感じがこの店の味だと思うから、それを損なわないようなデザインにして……割引、もしくはオマケクーポンつきにするといいかもな」
　続いた夢呼の言葉を聞き、葉月が静かに口を開いた。
「デザインや、チラシ用のイラストは私に任せてくれていいわ。時間がないから、コンビニのコピー機で作るけれど」
「じゃあ、そっちは任せる。頼むな」
「ええ、わかったわ」
　その後は各員の持ち場や役回りを確認し、助っ人たちはそれぞれの思いを胸に、動きだした。