レトロ喫茶「セピア」｜リアクション

レトロ喫茶「セピア」

◆　足並みそろえて（調理係編）

　調理場では、綾花と悠弥、そして依菜里が新作メニューを考えていた。
「今の時期だと、期間限定の「春パフェ」はいいと思います」
　ペンを片手に一枚の紙を見つめ、『セピア』の制服をまとった綾花が言った。
「思い浮かぶのは、桜の塩漬けを使った塩気のあるアイスとか苺のジュレ、さくらんぼを乗せたり春らしい色合いのパフェです」
「なるほど。それでしたら、食用のスミレなどを添えてみても、いいかもしれませんね」
「色合いとしては、パステルカラーのピンクや紫、でしょうか？　女性に人気の『ゆめかわいい』に通じるものがありますね」
　声を弾ませる綾花に、悠弥は「その通りです」と、笑みを返す。慣れた手つきで、さらさらと盛りつけ案を紙に描きだしていく悠弥の手もとを、色鉛筆を抱えた依菜里がじっと見つめている。
　と、そこへ戻ってきたのは、
「ああ、レンカさん」
　『セピア』では獅尾煉華と名乗ることにしたらしい、いいなである。
　こちらは、綾花とは異なり『セピア』の制服ではなく、悠弥と同じ詰め襟のシャツに着物と袴を身につけ、長い髪を一本の三つ編みにして垂らしている。
「美咲紀さん、次のメニューには何を頼まれていましたか？」
　悠弥が問うたところ、いいなはサクラをしながら店のメニューをコンプリートしようとしている美咲紀からの注文を告げた。
「レトロアイスクリームですって。昔のアイスクリーム製造器を使うって、メニューにはあったけれど」
「あれですね。では、レシピと製造器の使い方を教えますので、そちらをお願いしてもかまいませんか？」
「ええ、わかったわ」
　いいながうなずき、悠弥は綾花を振り返る。
「綾花さん。僕は少し離れますが、盛りつけの案があったら、ぜひ依菜里と一緒に描きこんでみてください。若いお嬢さん視点での盛りつけは、僕にはとても思いつきませんから」
「はいっ」
　笑顔で応じ、いいなと悠弥を見送った綾花は、依菜里と目線を合わせるべく、その場にしゃがみこんだ。
「よろしくね、依菜里ちゃん」
「うん、よろしくアヤカ！」
　ふたりして顔を見合わせて笑い、『セピア』の新作メニュー作りは続行されていく。

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