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- 学年：職業
- 00月00日生 00歳
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まものとの邂逅を此処に記す
ハッと目を瞠った時にはもう、新田 亮は見知らぬ火山の頂上に立っていた。
赤くどろりとしたマグマが、ごぼごぼと不吉な音を立てている。
亮は、努めて冷静に辺りを見回し――そして、気付いた。
恐ろしいような、鎧姿の巨大なまもの――自分によく似た、イフリートの姿に。
「……寝子島へ帰るには、奴と接触するしかないか」
そう直感して口を開けば、乾いた声が喉を揺らした。
できれば友好的に対応して欲しい所だが……と祈りながら、まものへと慎重に近付く。
相手もすぐに、亮のことを見留めたようだった。
『人の子とは珍しい。何故斯様な地へ参られた？』
３ｍはあろうかというまものは、亮を見下ろして低い声で問う。
「この地を訪れたというか……別の世界から、急に飛ばされた」
イフリートの問いに、亮は正直にそう応じた。
友好的な態度を心掛けながらも、警戒を捨てることは決してせずに。
ふむ、とイフリートが唸る。
『異世界からの来訪者だと、お主はそう言うのか』
「ああ。……信じてもらえるかは、わからないが」
『賢明だな。俄かには信じ難い話だが……お主の持ち物は、我と相対しようとするにはあまりに寂しい』
つまるところ、亮の出で立ちから、ある程度の信憑性は見積もってくれているらしい。
『しかし……お主には、どこか我と似た波長を感じる。お主は一体何者だ？』
「何者、と言われてもな……」
答えに窮して、亮は首の後ろをがしがしと掻いた。
「俺は……ただの人間だ。お前は、一体どういう存在なんだ？」
『我の問いに、問いで返すか。良かろう。丁度、暇を持て余していたところだ』
曲がったことは決して見逃さず許さぬであろう赤の双眸が、ごく僅かに細められる。
イフリートは、鎧をガチャリと鳴らして腕を組んだ。
マグマのような皮膚が、鎧の隙間から覗く。
『我は、火を司る精霊だ。下位の火の精霊達を導き、溶岩を操る』
「溶岩を？」
『左様。操り、管理するのだ。例えば、大量のマグマが地表へと流れ出ては事であろう？』
亮は、こくりと頷いた。
今訪れたばかりの世界の話ではあるが、想像するだけで恐ろしい。
亮の反応を受けて、イフリートのマグマよりも赤い目が満足げに光る。
『溶岩がこの地へ深刻なダメージを与えないよう計らうのは、我が務めの一つだ。覚えておくといい』
「承知した。だが、そうするとお前は……ずっと、この場所にいるのか？」
『普段は火口の中にいる。だが、こうして気晴らしに外へ出る事もあるな』
「火口の中に？ なら、お前は何を食べて生きているんだ？」
亮の問いに、くつ、とイフリートの喉が鳴った。
『お主は恐れを知らぬな。そして、知ることに貪欲だ』
「え？ ああ、悪い。中々ない機会だからな。つい」
『構わぬ。我は今、気晴らしの最中だからな。己の運の良さを誇るが良い』
言って、『さて、食事の話だったな』と炎のまものは零した。
『我は、食事を必要としない。栄養は火や熱、そして魔力で補われている』
「へえ……」
『もう、我に問うことはないのか、小さき探究者よ』
「ああ、概ね満足した。感謝する。しかし、お前が友好的なまもので本当に良かったよ」
亮が、ふっと微かに口の端を上げれば、
『友好的、か。それは、どうだろうな』
と、イフリートもそれと全く同じ表情を、その恐ろしげな顔に乗せた。
『敵とみなせば、我は瞬く間にお主を焼き尽くしていただろう。あとには、何も残らぬ』
そう言ったまものの目はギラギラと底光りをしていて。
ここに来て初めて、亮はその背に、冷たい汗を伝わせる。
「お前がさっき言った通り、俺は運が良かったんだな……」
『無論だ。だが、運が良いのは我も同じこと。中々に面白い邂逅であった』
邂逅であったと、イフリートはこの出会いを過去形で語った。
ふと、亮は気付く。己の手が、身体が、淡く透け始めていることに。
「寝子島に戻れるのか……来るのも突然なら、帰りも同じだな」
『しかし、あるべき場所へ還るのは良きことだ』
「全くだな」
亮の身体が、足元から消えていく。
イフリートが、幾らか名残惜しげな声で呟いた。
『我が力に耐えられず既に半分以上が崩壊してこそいるが、今、この鎧があって良かった』
「鎧？」
消えていきながら、それでも最後の問いを零した亮に、イフリートは言った。
『元は全身を覆っていたこの鎧は、我が内包する膨大なエネルギーを抑えている』
「つまり……その鎧がなければ、俺はお前に近付くことすらできなかったってことか」
『うむ、火の精霊以外は誰も、な。――さらばだ、聡き人の子よ』
ああ、とだけ、応じる亮。
間もなく、その身体はまかいから完全に消え失せた。
赤くどろりとしたマグマが、ごぼごぼと不吉な音を立てている。
亮は、努めて冷静に辺りを見回し――そして、気付いた。
恐ろしいような、鎧姿の巨大なまもの――自分によく似た、イフリートの姿に。
「……寝子島へ帰るには、奴と接触するしかないか」
そう直感して口を開けば、乾いた声が喉を揺らした。
できれば友好的に対応して欲しい所だが……と祈りながら、まものへと慎重に近付く。
相手もすぐに、亮のことを見留めたようだった。
３ｍはあろうかというまものは、亮を見下ろして低い声で問う。
「この地を訪れたというか……別の世界から、急に飛ばされた」
イフリートの問いに、亮は正直にそう応じた。
友好的な態度を心掛けながらも、警戒を捨てることは決してせずに。
ふむ、とイフリートが唸る。
『異世界からの来訪者だと、お主はそう言うのか』
「ああ。……信じてもらえるかは、わからないが」
『賢明だな。俄かには信じ難い話だが……お主の持ち物は、我と相対しようとするにはあまりに寂しい』
つまるところ、亮の出で立ちから、ある程度の信憑性は見積もってくれているらしい。
『しかし……お主には、どこか我と似た波長を感じる。お主は一体何者だ？』
「何者、と言われてもな……」
答えに窮して、亮は首の後ろをがしがしと掻いた。
「俺は……ただの人間だ。お前は、一体どういう存在なんだ？」
『我の問いに、問いで返すか。良かろう。丁度、暇を持て余していたところだ』
曲がったことは決して見逃さず許さぬであろう赤の双眸が、ごく僅かに細められる。
イフリートは、鎧をガチャリと鳴らして腕を組んだ。
マグマのような皮膚が、鎧の隙間から覗く。
『我は、火を司る精霊だ。下位の火の精霊達を導き、溶岩を操る』
「溶岩を？」
『左様。操り、管理するのだ。例えば、大量のマグマが地表へと流れ出ては事であろう？』
亮は、こくりと頷いた。
今訪れたばかりの世界の話ではあるが、想像するだけで恐ろしい。
亮の反応を受けて、イフリートのマグマよりも赤い目が満足げに光る。
『溶岩がこの地へ深刻なダメージを与えないよう計らうのは、我が務めの一つだ。覚えておくといい』
「承知した。だが、そうするとお前は……ずっと、この場所にいるのか？」
『普段は火口の中にいる。だが、こうして気晴らしに外へ出る事もあるな』
「火口の中に？ なら、お前は何を食べて生きているんだ？」
亮の問いに、くつ、とイフリートの喉が鳴った。
『お主は恐れを知らぬな。そして、知ることに貪欲だ』
「え？ ああ、悪い。中々ない機会だからな。つい」
『構わぬ。我は今、気晴らしの最中だからな。己の運の良さを誇るが良い』
言って、『さて、食事の話だったな』と炎のまものは零した。
『我は、食事を必要としない。栄養は火や熱、そして魔力で補われている』
「へえ……」
『もう、我に問うことはないのか、小さき探究者よ』
「ああ、概ね満足した。感謝する。しかし、お前が友好的なまもので本当に良かったよ」
亮が、ふっと微かに口の端を上げれば、
『友好的、か。それは、どうだろうな』
と、イフリートもそれと全く同じ表情を、その恐ろしげな顔に乗せた。
『敵とみなせば、我は瞬く間にお主を焼き尽くしていただろう。あとには、何も残らぬ』
そう言ったまものの目はギラギラと底光りをしていて。
ここに来て初めて、亮はその背に、冷たい汗を伝わせる。
「お前がさっき言った通り、俺は運が良かったんだな……」
『無論だ。だが、運が良いのは我も同じこと。中々に面白い邂逅であった』
邂逅であったと、イフリートはこの出会いを過去形で語った。
ふと、亮は気付く。己の手が、身体が、淡く透け始めていることに。
「寝子島に戻れるのか……来るのも突然なら、帰りも同じだな」
『しかし、あるべき場所へ還るのは良きことだ』
「全くだな」
亮の身体が、足元から消えていく。
イフリートが、幾らか名残惜しげな声で呟いた。
『我が力に耐えられず既に半分以上が崩壊してこそいるが、今、この鎧があって良かった』
「鎧？」
消えていきながら、それでも最後の問いを零した亮に、イフリートは言った。
『元は全身を覆っていたこの鎧は、我が内包する膨大なエネルギーを抑えている』
「つまり……その鎧がなければ、俺はお前に近付くことすらできなかったってことか」
『うむ、火の精霊以外は誰も、な。――さらばだ、聡き人の子よ』
ああ、とだけ、応じる亮。
間もなく、その身体はまかいから完全に消え失せた。
シナリオ
シナリオデータ
シナリオスケジュール
- シナリオガイド公開日
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- 2017年08月27日
- 参加申し込みの期限
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- 2017年09月03日 11時00分
- アクション投稿の期限
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- 2017年09月03日 11時00分
