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- 学年：職業
- 00月00日生 00歳
- AAA000000
あなたと巡り合ってから
蜜花の香る風に目隠し代わりのレースカーテンはひらひらと揺れ動き、魅惑の踊りにつられた子猫達が攻略しがいのある獲物とばかりにじゃれついていた。
「傷むから駄目だよ」とジェレミア・ベルトーニが注意しても、遊びに夢中になっている彼等には届いてはいなかった。そのうち爪を立ててよじ登りでもするのだろうか。
それはレース生地も傷むし、カーテンレールも歪むかもしれないので止めて欲しいとは思うものの、実行に移すまでは自由にさせてやんちゃが過ぎたらその時再び声をかけようと肩を竦めた。
そんな彼の足元で、目の周りに大黒ぶちも特徴的な三毛猫のるちるは、あまり賑やかにならないでと言うように陽光に暖まった窓辺へと移動するとその場に寝そべり、そのまま目を瞑る。ぴるると耳を動かすのはのは悪戯をされないように警戒でもしているのかもしれない。
天気が良いからと窓を開けて過ごす午後。
急な駆け込みも無い休診日のささやかなる贅沢。
４月の陽気に包まれて時間はゆっくり流れている様だ。
至福のひととき。
…※…
寝子島の穏やかな気候。
それと野良猫の多さに惹かれ、寝子島に動物病院を開くことを決めたジェレミア。
引っ越してまだ間もない慌ただしい中、彼は庭先で生まれて数日と見える赤ちゃん猫を拾った。
庭先といっても、本当に庭のすみっこで、産み捨てに近い状態の生き物を拾うとは思ってもみなかった。
天気が良いからと雨が降らない内に屋外の雑用を済ませようと、本業に本腰が入れば自ずと手が届きにくくなるだろう庭の草花を慮り、草むしりをしている最中のまさに草むらと化したその場所を掻き分けた先の出会いだった。
母猫の姿は見えず、また、兄弟猫の存在も鳴き声も感じず聞こえない。
まだ臍の緒がついたままで、このままでは死んでしまうだろうことは、ジェレミアの目には子猫の運命が明白に映ってしまっていた。
この一匹だけが取り残されている。生まれたてを捨てるなど猫の事情とはどんなものなのだろう。野良だろうか。それとも飼いきれず捨てる他無いという人間のエゴの結果か。
想像を巡らせても理由など推測できるはずもなく、ジェレミアは緩く首を横に振った。
「大丈夫、大丈夫だから。ほらほら男の子だろ」
母猫を呼びぶ赤ちゃん猫を驚かせないようにタオルで包むと、そこから逃げ出そうとささやかな抵抗をされて、予想よりは衰弱してないことにホッとする。
病院の前に置き去りにするなんて、この仔にとって幸か不幸か判断できないが、ジェレミアは一にも二にも保護を優先させる。捨て猫の里親探しを仕事のひとつにしようかなとぼんやり考えてはいたが、手元に置こうと手当を終えて初めての授乳をさせながらジェレミアは飼うことを決めた。
看板猫。なんていうのも魅力的だと思うし。
それからの子育てならぬ、仔育ては色々と大変だった。基本的に体のサイズが小さければ小さい程、病気や怪我をしたときの治療は難しくなる。産み捨てというスタートも悪かった。職場に持ち込んでつきっきりの看病が必要だったことも一度や二度ではない。
…※…
それがレースカーテンに飛びついて引き裂いてしまうのではと冷や冷やさせるだけのやんちゃっぷりを発揮するまでに成長したのだから、喜ばしいことではある。
開けた窓の向こうにはいつかの庭が見えた。
「でも拾った時は毛の色もまだハッキリしなかったかな」
最初がばたばたし過ぎていて、書類の手続きをする段階になって名前をつけていなかったのに気づいたりして、遅れた名付けに二、三日程悩んだのも懐かしい。
「ニホンゴは同じ音の単語多いから、意味を色々重ねられていいよね」
幾つも意味を持たせたかったのもあり、ひらがなにした。
名前の由来は、灰色を「薄墨」と表す事もあると聞いたし、
なにより、庭のすみにいた、薄墨色の猫だから「すみ」と名付けた。
「丸みを帯びた文字がかわいいよね」
寝子島に住み始めてから最初に飼った猫。それから三匹ほど手元に置くようになったがどの猫もひらがなの名前を付けた。
茶トラのこはくにヒョウ柄のみなみはまだ子供で、そんな二匹の良いお兄ちゃん役をすみは面倒見も良く賢くこなしていて可愛い限りである。
本当にいい子だ。
「ん？」
こっそりと褒めていたのがばれたのだろうか。ジェレミアと目が合ったすみはダッシュとばかりに彼の元に駆け寄り、その膝に乗った。
さぁ、撫でろと甘えられて、ジェレミアはその体を催促されるままにゆっくりと撫でる。
寝子島に来て一番長い時間一緒に過ごしてきた、すみ。
願わくば、ずっとずっと、長生きして欲しい。
そしてネコマタを目指して、もっと一緒にいて欲しい。
「傷むから駄目だよ」とジェレミア・ベルトーニが注意しても、遊びに夢中になっている彼等には届いてはいなかった。そのうち爪を立ててよじ登りでもするのだろうか。
それはレース生地も傷むし、カーテンレールも歪むかもしれないので止めて欲しいとは思うものの、実行に移すまでは自由にさせてやんちゃが過ぎたらその時再び声をかけようと肩を竦めた。
そんな彼の足元で、目の周りに大黒ぶちも特徴的な三毛猫のるちるは、あまり賑やかにならないでと言うように陽光に暖まった窓辺へと移動するとその場に寝そべり、そのまま目を瞑る。ぴるると耳を動かすのはのは悪戯をされないように警戒でもしているのかもしれない。
天気が良いからと窓を開けて過ごす午後。
急な駆け込みも無い休診日のささやかなる贅沢。
４月の陽気に包まれて時間はゆっくり流れている様だ。
至福のひととき。
寝子島の穏やかな気候。
それと野良猫の多さに惹かれ、寝子島に動物病院を開くことを決めたジェレミア。
引っ越してまだ間もない慌ただしい中、彼は庭先で生まれて数日と見える赤ちゃん猫を拾った。
庭先といっても、本当に庭のすみっこで、産み捨てに近い状態の生き物を拾うとは思ってもみなかった。
天気が良いからと雨が降らない内に屋外の雑用を済ませようと、本業に本腰が入れば自ずと手が届きにくくなるだろう庭の草花を慮り、草むしりをしている最中のまさに草むらと化したその場所を掻き分けた先の出会いだった。
母猫の姿は見えず、また、兄弟猫の存在も鳴き声も感じず聞こえない。
まだ臍の緒がついたままで、このままでは死んでしまうだろうことは、ジェレミアの目には子猫の運命が明白に映ってしまっていた。
この一匹だけが取り残されている。生まれたてを捨てるなど猫の事情とはどんなものなのだろう。野良だろうか。それとも飼いきれず捨てる他無いという人間のエゴの結果か。
想像を巡らせても理由など推測できるはずもなく、ジェレミアは緩く首を横に振った。
「大丈夫、大丈夫だから。ほらほら男の子だろ」
母猫を呼びぶ赤ちゃん猫を驚かせないようにタオルで包むと、そこから逃げ出そうとささやかな抵抗をされて、予想よりは衰弱してないことにホッとする。
病院の前に置き去りにするなんて、この仔にとって幸か不幸か判断できないが、ジェレミアは一にも二にも保護を優先させる。捨て猫の里親探しを仕事のひとつにしようかなとぼんやり考えてはいたが、手元に置こうと手当を終えて初めての授乳をさせながらジェレミアは飼うことを決めた。
看板猫。なんていうのも魅力的だと思うし。
それからの子育てならぬ、仔育ては色々と大変だった。基本的に体のサイズが小さければ小さい程、病気や怪我をしたときの治療は難しくなる。産み捨てというスタートも悪かった。職場に持ち込んでつきっきりの看病が必要だったことも一度や二度ではない。
それがレースカーテンに飛びついて引き裂いてしまうのではと冷や冷やさせるだけのやんちゃっぷりを発揮するまでに成長したのだから、喜ばしいことではある。
開けた窓の向こうにはいつかの庭が見えた。
「でも拾った時は毛の色もまだハッキリしなかったかな」
最初がばたばたし過ぎていて、書類の手続きをする段階になって名前をつけていなかったのに気づいたりして、遅れた名付けに二、三日程悩んだのも懐かしい。
「ニホンゴは同じ音の単語多いから、意味を色々重ねられていいよね」
幾つも意味を持たせたかったのもあり、ひらがなにした。
名前の由来は、灰色を「薄墨」と表す事もあると聞いたし、
なにより、庭のすみにいた、薄墨色の猫だから「すみ」と名付けた。
「丸みを帯びた文字がかわいいよね」
寝子島に住み始めてから最初に飼った猫。それから三匹ほど手元に置くようになったがどの猫もひらがなの名前を付けた。
茶トラのこはくにヒョウ柄のみなみはまだ子供で、そんな二匹の良いお兄ちゃん役をすみは面倒見も良く賢くこなしていて可愛い限りである。
本当にいい子だ。
「ん？」
こっそりと褒めていたのがばれたのだろうか。ジェレミアと目が合ったすみはダッシュとばかりに彼の元に駆け寄り、その膝に乗った。
さぁ、撫でろと甘えられて、ジェレミアはその体を催促されるままにゆっくりと撫でる。
寝子島に来て一番長い時間一緒に過ごしてきた、すみ。
願わくば、ずっとずっと、長生きして欲しい。
そしてネコマタを目指して、もっと一緒にいて欲しい。
シナリオ
シナリオデータ
シナリオスケジュール
- シナリオガイド公開日
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- 2017年06月20日
- 参加申し込みの期限
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- 2017年06月27日 11時00分
- アクション投稿の期限
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- 2017年06月27日 11時00分
