猫鳴館を知ってるかい？｜リアクション

猫鳴館を知ってるかい？

「やれやれ、何故俺が掃除を手伝わなきゃいけないんだ」
　筋肉質で童顔の新田亮は、猫鳴館の友人の元を訪れていました。
　亮自身は旧市街在住なのですが、何かと面倒臭がっては他人に頼る悪友の田中のお願いで、掃除を手伝うことになったのです。
　田中とは中学の時からの腐れ縁で、彼が寝子高に入れたのは亮が受験勉強に協力したおかげでもありました。
　興味のあること以外は適当な男ですが、恩返しをする程度の優しさはあるので、情に厚い亮はつい頼まれると協力してしまうのです。
「よろしくな」
　入ってみると部屋の床は一面ゴミだらけで、想像以上の惨状でした。
「はぁ……やるしかないか。今度何か奢れよ」
「助かるよ」
　とっとと終わらせるか、と始めて５分。
　田中の携帯が鳴りました。
「っと、ごめん」
　慌ただしく出ていく田中に、やれやれと思いながら声をかける亮。
「早く戻って来いよ」
　しかし。

「何やってんだあいつ……」　
　それから１０分たっても田中は戻ってきません。
「掃除終わっちまうじゃないか」
　だからといって、仕事を放りだしたり手抜きをしたりは意地でもできない亮です。

　さらに１０分……
「遅すぎるだろ！」
　掃除が終わったとき、ようやく田中は戻ってきました。
「随分遅かったな。何やってたんだ？」　
　怒りを抑え込み、亮は呆れたように質問しました。
（相手にも事情はあるだろう。どうしても急がなくてはならない用事だったのかもしれない）
　と思っていたのもつかの間。
　田中は相好を崩し、
「ごめんごめん、彼女が切らしてくれなくてさ～」
　などと言うではありませんか。
「……今までずっと彼女と電話でイチャイチャしていた？」
「彼女から電話がかかってくるのって珍しくてさ～、また今度な、なんて言えないじゃん」
「俺に掃除押し付けてか？」
　亮の顔色が変わってきたのに、さすがの田中も気づいたようです。
「いや、押し付けるつもりなんかなかったんだぜ？　いや、ちょっと待て……」
「いい度胸してるじゃないか。……タダで済むとは思うなよ」
　こうして決戦の火蓋が切って落とされたのでした。