猫鳴館を知ってるかい？｜リアクション

猫鳴館を知ってるかい？

※大掃除！

「先輩たちの残していった遺産は確かに、財産ではあるんだろうけど、このままじゃ建物の耐久的に危険じゃないかな？」
　大広間では、奈良橋博美が皆に話していました。
　父に武術を教わるため女を捨てた博美は、今日も動きやすい服装です。　
「特に薄い本は意外と重さがあるので、在校生の分も含めて特に危険本を廃品回収に出すべきだ」
　ざわ……！
　寮生たちから、言葉にならないうめきや嘆きの声が上がりました。
「薄い本なのに重いのなの？　厚い本のほうがもっと重いなの」
　天然な自治会長、橘明里が首を傾げます。
「……いや、そういう意味じゃなくて」　
　説明に悩む博美ですが、スルーして話を進めることにしました。
「勿論、全部処分するようになんて酷なことは言わない。一人十冊ぐらい残して、後は処分すればいいんじゃないかな？」
　今後は皆からため息が起こります。
　みんな館の耐久度は不安だし、いろいろ捨てるべきなのはわかっているのですが、自分のお気に入りとなるとどうも惜しくなってしまうのでした。
「新入生も入って来るのでなるべく綺麗にしておきたいですね。いつもできないところの掃除をしましょう」
　笑顔で言ったのは綾辻綾花です。
（自分の部屋は定期的に掃除をしてるので大丈夫ですけど、問題は共有の場所です）
　博美と対照的に胸が大きい綾花ですが、猫鳴館を大事に思う気持ちは二人とも一緒のようでした。
「大掃除ついでに、変な穴や秘密基地の入り口は封印しよう。建物の耐久度を少しでも強く保つためには、穴とかあるといろいろまずいと思うし」
　博美が言います。
「建物が崩れたら危険なのは、住んでいる俺達なんだぜ」
　何人かが何か言いたそうに目を見合わせましたが、博美にそう言われると表立って反対する者はいませんでした。
（ある程度は、自主的な協力をしてもらうこと前提で動くさ。無理やりやったところで、抜け道を探す泥仕合だし、そもそもオレに命令するような権限あるわけじゃないしね）
　そう思っている博美です。
「オレ自身は引っ越しはしないけど、引越ししたい人の手伝いみたいに、他の人の手伝いはどんどんやる。大掃除することで、引越ししやすい状況にもなるだろうしさ」

「鳶色彦さん、居ますか？」
　綾花は台所の床下を覗いて声をかけてみました。
「いますよ。こんにちは」
　身長２０ｃｍの小人の山之鳶色彦が顔を覗かせました。
「こんにちは。床下は快適ですか？」
「ええ、最近は暖かくなってきて過ごしやすくなりました」
「それは良かったです。ところで鳶色彦さん、一緒に掃除しませんか？　いつもできないところの掃除をしましょう」　
「掃除ですか。わかりました、よろしくお願いします」
　綾花は箒と塵取りと雑巾を持って床下へ降りていきました。
　猫鳴館住まいで鍛えられているとはいえ、虫の大群が苦手な綾花には結構勇気が要ります。
「Ｇ（ゴキブリ）はいませんか？　ここに来るのはＧに占拠されて以来ですね」
「おかげで最近はでていません」
　鳶色彦も、手製の小さな箒を持って一生懸命掃除をしています。
「安心しました。あと、足音とか声とかうるさいなと思ったら言ってくださいね。床下まで響きそうですから」
　そう言いながら綾花は、下の砂を掃いたり窓を磨いたりするのでした。
「そういえば、今日は新入生の歓迎会があるそうです。もてなす料理を考えてますけど、鳶色彦さんの好きな食べ物は何ですか？」
「私ですか？　そうですね……お餅かな。それと、チーズも好きです」
「わかりました。用意しておきますね。それと、新入生がここに迷い込むかもしれないのでその時は宜しくお願いしますね」
「ありがとうございます。そうですね、気をつけておきます」

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