【サンマさん＆マンボウくんのゆるゆるお魚ランド（２）】

　きらきら、ぴかぴか！　空をゆくゆるキャラパレードはどんちゃんちゃかちゃんと賑やかに、光を放ちながら進みます。
　真境名 アリサはマンボウくんと並んでゆるゆる泳ぎながら、近況報告などしております。
「……というわけでね、出世したのはいいんだけど、このところ忙しくてね～」
「そうかぁ、お姉さんも大変なんだね。でも昇進したのは、お姉さんの仕事ぶりが認められたってことじゃないか。その頑張りはきっと、報われるよ！」
　きらーん！　最初に出会ったあの時とは違い、なんともイケメンなマンボウくんの励ましに、アリサはにっこり。ありがと！　と笑って、彼のほっぺたにチュウをしました。
　いっぽう志波 拓郎はといいますと、
「ラッコくん……久しぶりに会えて、うれしい、よ」
「…………」
　かかん、かん、かこん！　言葉はなくとも、無表情でも、音を聞くだけで彼の意思は伝わります。その貝さばきはなんだかますますパワーアップしているような気がして、拓郎はどこか嬉しく思いながらも、
（やっぱり、兄貴にノリが似てるよな……）
　ラッコくんの暑苦しさにはどうにも、メガネのお兄さまを連想させられてしまうのでした。
　ゆるキャラ一行のまわりをくるくると泳ぎ回る曖浜 瑠樹とトワ・E・ライトフェロゥ、それに昆布のコンブさんやシーラカンスのラティさまと一緒に、三折部 朝衣もここぞとばかりに空中遊泳を堪能しています。
「たまには仕事を忘れて、子どもと遊んだりするのも悪くないわね……」
「わぁ、お姉さんもコンブさんも、泳ぐの上手いねぇ！」
「トワたちも行くデスヨー、とやーっ！」
　すいすいすいと、まるでお魚のように自由自在。ラティさまはぱちぱちと手を叩いて、
「まぁ、トワちゃんもお上手ね♪」
「sunfishにも、サンマファミリーにも、負けてられないのデス！」
「あら？　瑠樹さん、また私たちのお友だちが遊びに来てくれたみたいです！」
　コンブさんが手を掲げたほうを見て見ますと……バリエーション豊かなゆるキャラたちが、まだまだ続々とやってくるではありませんか！
「はて、あっしは北海道を目指してたはずなんだが……ま、旅は風の向くまま気の向くまま。ちょいとばかり遠回りしたところで、バチは当たるめぇ」
　方向音痴は治ってないらしい、シャケ次郎！
「あぁら、あたしを呼んだかしらぁ？　ええ、いいわよ。パレードの華、あたしが見事務めて見せるわ！」
　ひらひらと優雅にヒレをなびかせる、キンギョさん！
「こらーっ、待ちなさーい！　サンマさんを食べちゃおうなんて、この魔法少女クリオーネが許さないんだから！」
　サンマさんを付け狙う小ネコサンマ、黒猫のクロちゃんを追いかける、魔法少女クリオーネ！
「おう、サンマよ！　俺たちも遊びに来てやったぜ！」
「ふっ……たまにはガキどものお守りをしてやるのも、悪くはないぜ……」
　アオザメさんに、l>┼┼(.,,ﾟДﾟ) アジさんも！
　サンファミキャラたちを筆頭に、他にもお魚っぽいキャラクターが後から後から来るわ来るわ……ひと言で言い表すならこれすなわち、魚群！
　パレードは星ヶ丘のメインストリートをずずずいと横切って、やがてイソラ・ガレッジャンテへたどりつきます。
「とうちゃくー！　オレ、お腹空いちゃったなぁ。みんな、ごはんにしよっかー？」
　瑠樹がそう言うと、みんなはわあっと声を上げました。
　今日は、ウソがホントになる日。願いを口にするだけで、思い思いの食べたいものが、ぽわっ！　どこからか現れてくれるのです。
　どちらかと言うとパレードというより遠足のようなノリですけれど、とにかく楽しければＯＫなのです！



　おいしいイクラ丼など頬張っていた朝衣とアリサがふと、それに気づきました。
「あら？　これ……パック詰めの、しらす？」
「賞味期限も書いてるわね。えっ、これって今朝の取れたてじゃない！　すごくいいしらすだわ、これ」
　なぜだか、いつの間にやらあちこちに置いてある、寝子島名産・釜揚げしらすのパック詰め。その美味しさは寝子島住人なら今さら言わずもがな……ではありますけれど、なんでそんなものがそこら中に置いてあるのでしょうか？
「わー、おいしそーデス！　シラスー、誰のデスカー？　トワ、食べちゃいマスヨー」
「なら、オレも食べるよぉー！　こうやってねぇ、イクラ丼にしらすを、ぱらぱらーってかけてねぇ」
　物怖じしないお子さまふたり、さっそくしらすをほかほかご飯にふりかけまして。ぱくり！
「Oh,It's delicious！！」
「うわぁ、美味しいねぇ♪　みんな、食べてみなよぉー。とっても美味しいよぉ？」
　なんて本当に美味しそうに食べるもので、みんなそろってごくりとつばを飲み込んでしまいました。
「あ、あたしも食べてみよっかな……？」
「そうね、捨てちゃうのももったいないし……」
　アリサと朝衣も同じように、ぱらりぱらぱらと釜揚げしらすをふりかけまして。ぷちぷち新鮮なイクラとご飯をまとめて、ぱくり！
「「……美味しい～！」」
「あ、これって……」
　拓郎ははっとして、あたりを見回します。
　実のところ彼、このしらすの差し入れにはちょっぴり、心当たりがあったりしまして。
「そういえば俺、さっき……ひとつ、ウソついたんだ……」
　かこん？　と覗きこむラッコくんに微笑んでから、拓郎は語ります。
　彼が朝方についたウソは……『過去に何度も観光大使の推薦を受けながらも辞退した、幻と呼ばれるゆるキャラがいる』！
　半透明に透き通る、ゆるキャラとは思えないほどに艶めかしく美しいボディ。彼女は熱さに弱く、人が多く熱気のあるところには近づけないと言います。よって見る者はおらず、幻と呼ばれているのです。けれど寂しがり屋な彼女は自己主張のため、こうしてこっそりしらすを贈ってくれるのだとか。
「……釜揚げコワイ……」
　か細い声が聞こえて、みんながくるりとそちらを向いてみますと……建物のかげに半分隠れたまま、ちらりと覗く美しいシースルーなボディ。
「でも、しらす……美味しいよ……？」
「……生野 しらす、さん！」
　拓郎が名前を呼ぶと、しらすさんは恥ずかしそうに頬を赤く染めながら、にこりと笑ってくれました。
「わぁ、しらすさんも可愛いねぇ！」
「オイシーシラス、Thanksデス！」
「せっかくだから、あなたも一緒に遊びましょ？　あ、でも、人の熱気に弱いんだっけ？」
「じゃ、何人かで交代で遊んであげたらいいんじゃないかしら。それならいいでしょ？」
　瑠樹とトワ、朝衣とアリサもそう言って誘うと、しらすさんはこくこくとうなずきます。
　サンマさんとマンボウくん、ファミリーズの仲間たちももちろん、新しいお友だちは大歓迎のようでして、
「お前さんもいっしょに、パレードしようぜ～！」
「うん、いっしょにね。次はシーサイドタウンと旧市街を巡って、最後は九夜山にも登ってしまおう！」
　それはいいね、やろうやろう！　と大盛り上がり。
　引っ込み思案なしらすさんも仲間に入れてもらえて、嬉しそうな彼女を見つめながら、
「……良かった、な。しらすさん」
　拓郎はそうっとつぶやいて、微笑んだのでした。



　ご飯を食べてお腹を満たしたら、パレードは再出発！
　お魚たちの賑やかな行進は、今日という日が終わるまで、まだまだ続きそうです。