がまん大会の時間です！｜リアクション

がまん大会の時間です！

　――続・がまん大会、２戦目！

　それは、一体何順目の出来事だっただろうか。
「モームリ！！」
　大天使天吏が相変わらずゆったりとキムチを口に運んでいた時のこと。
　シュポーン！　という効果音付きで、志波武道がこたつからとび出した。
　そして、とび出したと思った瞬間には、
「って、どこまで脱いでるのよ！？」
　という具合で、武道はイリュージョンの如くにブーメランパンツ一丁という姿に！
「テヘ☆　脱衣に定評がある武道君デッス☆」
　豪快な脱ぎっぷりを見せた武道が、犬杜初のつっこみを受けてウインクを一つ決める。
　そうしておちゃらけてみせてから、武道は胸中にふう、と息を吐いた。
（勝負事とくれば負けたくなかったけど、体調とは要相談だよな。うん、これ以上はまずい）
　天吏のマイペース作戦（無自覚）は、時間と周囲の体力を容赦なく削り続けていた。
　我が身の状態を冷静に把握して一抜けした武道は、
「終わった終わった！　ちゃんと適度の水分取って、体もしっかり冷まさないとね☆」
　なんて、いっそさっぱりしたという顔でにっと白い歯を見せる。
「うぐぐぐ、敗者の余裕！」
　その発言に唇を噛む初を、サキリ・デイジーカッターはちらと見遣った。
（正直、個人的には初に勝って欲しかったけど……そろそろ限界かな？）
　ならばと、サキリは迷いなく手を挙げて宣言する。
「僕も降参するよ」
　こたつから出て、淀みのない動作でどてらを脱ぎ、立ち上がるサキリ。
　そしてサキリは、初に無理をさせまいと巧みな誘導に掛かる。
「さて、それじゃあ志波先輩と隣の部屋に涼みに行こうかな」
「うう、悪魔の誘惑が……」
「確か、アイスクリームもあったな。今食べるアイスはさぞ美味しいだろうね」
　初が、左斜め前に座る天吏の顔をじっと見た。
「初ちゃん？　どうかした？」
　視線に気付いた天吏が、瞳をぱちぱちと瞬かせる。
　その様子をまだ余裕アリと見るや、初は勢いよく立ち上がった。
「ういも！　今！　アイス食べる！」
　勝者を待つお洒落なアイスクリームは魅力的だが、初は目前の誘惑に陥落した。
　天吏が、口元に手を宛がう。
「ええと、そうしたら……」
「うん、勝者は天吏ちゃんだね！　オメデトウ☆」
　武道がその健闘を讃えるように手をひらりとさせ、サキリも口元にふっと微笑を乗せた。
「おめでとう、見事な戦いぶりだったな」
　サキリの唇を言祝ぎが揺らした、その時。
「成る程、あおいの言った通りだ。盛り上がってるみたいだね」
　がらがらがらっと扉が開き、八神修が顔を出した。
　廊下の空気が、ほんの少しだけ室内の熱気を緩める。
「ね？　楽しそうでしょ？」
　と、修の後ろで笑うのは、七夜あおい。
　あおいの笑顔を見て、修も、にっこりとする。
「ああ、面白そうだ。折角あおいが誘ってくれたんだし、俺も参加するよ」
「よーっし！　そうと決まればなんか賭けようぜ～♪」
　にししっと笑うのは、野菜原ユウ。
　そうだなあと、修は顎に手を宛がった。
「なあ、このチームも何か賭けたのか？」
「ああ、お洒落な店のアイスクリームをね」
　サキリが応じて、「なら、俺達もそれにしようか」と修が頷く。
　どてらを脱ぎ捨てた初が、修達と一緒にやってきた犬杜一閃へと声を張った。
「お兄ちゃん！　ういの仇取ってきてね！　アイスクリーム！」
「初ちゃん、声が涸れてるわよ。先ずは、移動してスポーツドリンクでも飲みましょう？」
　水分不足になっているかもしれないから気を付けないと、と笑み掛けられて、
「飲むー！　アイスも食べる！　いっぱい食べるー！」
　と、初は声の主――天吏へと殆ど泣きそうになりながら縋り付いた。
　そんな初の背をぽんぽんと優しく叩いてやりながら、それにしても、と天吏。