双界からの試練　―紅玉の阿修羅姫ケイファ―｜リアクション

双界からの試練　―紅玉の阿修羅姫ケイファ―

起：お姫様を迎えに

　――煉獄の檻・封じの洞窟

　赤々と輝くマグマの海。その熱気に負けないぐらい、集まった冒険者達の心も熱くなっていた。
　そんな中、涼しげな顔で佇む者が一人。弓メインの軽戦士となった黒兎都であった。彼女は前回煉獄の檻を探索した際倒した敵から得た素材を使ってアイテムを製作していたのだ。
「せっかくだからね。イフリートウルフの毛皮を使ったポンチョに、ヘルウルフの毛皮を使ったブーツだよ。耐熱効果ばっちり！」
「なかなかいいデザインだね！」
　そう言ったのは金属性メインの魔導士となった桜庭円。傍らでは、ドレスを思わせる鎧『黒銀茨の狼鎧』を纏った白真白も頷いている。
　円は髪に飾った『機械の蝶』をマグマの光に煌かせながら僅かに唸った。視線の先には、マグマの海。そして……その先にある浮島である。マグマは煮えたぎっており、泡が弾けると共にマグマと小石が宙を舞う。
「それにしても、マグマかぁ。耐熱ポーションは飲むとして……地形が厄介だね」
「とりあえず渡る物はあるが……足場を作っておこう」
　そう言ったのは土属性の魔導士、新田亮。彼は耐熱ポーションを呷りヘルウルフの焼肉を食べて準備を整えていた。作戦開始となればすぐに動いてくれるだろう。
「心強いね！　あ、円ちゃんにブースターつけてもらって移動補助してもらうかな？」
　できる？　と真白が問えば円は「できるよ～」といつもの元気な笑顔で応じる。彼女たちもまた亮と同じように耐熱ポーションを飲み干し、準備を整えた。
「ぷはっ！　これ、けっこう効くなぁ！」
　不意に声が聞こえ、振り向くと……昔見たようなスケバンがいた。サングラスにセーラー服という井出達はゲームの世界からしてみれば不思議な感じがするが、妙に似合っている。そんな金髪を揺らした彼女の正体は……なんと、亮の妹である新田樹である。
「お～、懐かしい感じのスケバンだの～。で、ジョブは……重戦士？」
　都の問いに樹は「おうよ！」とにやりと笑い、真白は嬉しそうに飛び跳ねる。
「やったね！　それにしても武器がバット？　防御にも使えそうだね！」
「こいつは中々のモンだよ。アタイの手になじむ相棒さ」
（ノリノリだなぁ……）
　気合の入った樹の演技に、兄の亮は内心で苦笑するのであった。

（こっそり始めていたが、面白い事になったねぇ）
　内心で呟いたのは、拳闘士の七峯亨。彼は「折角のレイドだ、暴れるぜっ！」と闘志を燃やしている。そんな彼の側では同じく拳闘士の薄野九月も笑顔で頷いた。彼女はキャスケットを押さえつつ周囲を眺めて声を上げる。
「わぁー、熱いねぇ！　でも、テテオも『お姫様を助けてあげてっ』って言っていたし、お姫様も退屈してるみたいだし、がんばろうね！」
「ああ。思いっきりやってやろうぜ！」
　九月と亨はハイタッチで気合を入れる。そんな２人が目撃したのは、ちょっと緊張気味な塔ヶ崎璃亜の姿だった。ゲームに呼ばれたのが初めてだからだろうか。竦む足を無理矢理動かし、璃亜は一歩踏み出した。
「あのっ！　ヘイト管理とか詳しい方居ませんか？　アドバイスを頂きたいのですが……」
「俺でよければ」
　璃亜の呼びかけに亨が手を上げる。
「ヘイトって言うのは簡単に言えば敵からの注目度って事かな？　防御力の高い奴が敵の攻撃を引いて、周りで叩くってのもアリな戦法だなー。このヘイト管理ってのは……」
　と親切に説明する彼に璃亜はしっかり覚えようとメモを取る。傍らで九月もアドバイスできる事を考え、伝えたりすれば璃亜の緊張も幾分かほぐれたようだ。
「ありがとうございます、お２人とも。がんばりますっ！」
「うん、一緒にがんばろうね！」
　意気込む璃亜の手を取り九月が笑顔を向ける。そんな２人を亨は優しい眼差しで見ていた。

「うん、やっぱり使い慣れたジョブの方がやりやすいよね！」
　手にしたナックルの感触を確かめながら拳闘士の羽生碧南が何度も頷く。屋敷野梢もまた同じジョブであり、ぐっ、と拳を握り締めて気合を入れていた。

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