桜花寮フルーツバスケット！｜リアクション

桜花寮フルーツバスケット！

○二人の内緒話

「たった1年なのに、随分といろんなものが出来上がったなって思うの」　
　夢宮瑠奈と七音侑は、部屋割りの変更を聞いて、少しづつ部屋のものを片付けていた。
「もう1年かぁ……」
　七音侑は、同級生の子がくれた可愛い狐のぬいぐるみを眺めた。
　その狐の隣には自分で作った黒猫のぬいぐるみ。そしてルームメイトの瑠奈がもらったぬいぐるみとも、楽しそうな感じに並んでいる。
「いつだったか学校の友達が作ってたぬいぐるみをもらったんだよねよ」
　瑠奈が言う。
（部屋が絵になるなら、色んな思い出に花を咲かせよう）
　そんなことを思う。
　部屋の片付けをしてると色んな物が出てくる。
　それと共にいろんな思い出が蘇ってくる。
「すっごいカワイイよねーって言ったら、気軽にくれたのすごく気前よかったよねー」
　かと思うと、話はネットゲーム『Cat Island』の世界に飛んだりもする。
「そういえば最初は瑠奈、こんぴーた苦手だって言ってたんだよにー」
「いきなり知らない世界にいた時はびっくりしたよー。思えば、このふしぎなゲームから、あたしたちの仮想アイドルコンビ『ルナナ』が始まってるんだよね」
「瑠奈がやっていたからちょっとお手伝い、のつもりがウチまでアイドルになっちゃうなんてびっくりだにー」
「歌、数曲出したよねー。そうだ、また今度曲作ろう」
「もちろん。今度は楽しく踊れる曲がいいなー♪」
　二人は楽しそうに笑い合った。
「そうだ。門限が過ぎちゃった時のベランダの乗り越え用階段分解しとかないと！」
　窓際を見て侑が気づく。
「見つかったら大変だから、こっそり運び出さないとねー」
　侑のろっこん『エアホッパー』は、スニーカーを履いてつま先で地面を2回叩くと空中でも跳躍できるようになるというものだ。
　ろっこんの力と上から下ろしてもらう階段を合わせれば、門限も怖くない。
「今考えると結構なワルだにー。瑠奈も共犯だからね？」
「ふふ。たった一年だったのに、すごく親密になったよね、あたしたち。本当に、家族みたいになったね」
　楽しく笑っていたはずなのに。じんわり。寂しさが沁みてくる。
（瑠奈は今度誰と一緒になるんだろ……そこでもこうやって楽しくおしゃべりするのかな……ウチのことなんか忘れちゃうかな……ううん。そんなことない。そうならないようにウチが遊びに行けばいいんだ！）
「まあ、部屋が変わるだけだし、ちょくちょく遊びに行くね。あ、クッキー食べよう」
　クッキーを食べながら、瑠奈は強気に言うが。
（そうだ。まだ誰にも言ってないことを打ち明けて瑠奈と共有しよう。瑠奈に一番最初に教えるっていう特別感で悲しい気持ちを飛ばすんだ）
　そう決めて、侑は切りだす。
「そうだ。まだ誰にも言ってないし教えちゃだめだよ？」
「何何？　聞かせて」
「あのね……実は、彼氏ができたの……」　
「ええっ！？」
　瑠奈の大きな目が、もっと見開かれて……そして満面の笑顔になった。