桜花寮フルーツバスケット！｜リアクション

桜花寮フルーツバスケット！

○不運と世話焼きと

「部屋替えかぁ……色々と思う所はあるけれど」
　高峰一馬に頭に包帯を巻いてもらった血陣遵は、部屋を見回しながら言った。
「今までの思い出を振り返ってみると一馬には色々と世話になってばかりだよね」
　言われた一馬は、遵をまっすぐ見て答える。
「世話した……って、まぁ状況見っと結果的にそうなってるんだけどさぁ」
　遵はよく転んだり手を切ったり、ドジをしたり怪我が絶えない不幸体質なので、否定できないのがつらいところである。
「俺としては全然苦になっちゃねえから別に気にしなくてもいいんだぜ？　まぁ気にしちまうとこが血陣だな、ってのはあるけど」
　世話焼きである一馬は、別に気を使って言っているわけではないのだが。
「今までずっと迷惑かけてごめんね。新しいルームメイト、いい人だといいね」
「そーいうこと言うんじゃねえって！　いいか、俺が好きで世話焼いてんだから！　一人部屋に行くとか言うなよ？」
「一人部屋は……うん……僕が行くと知らない間に死んでしまうかもしれないからやめておくとしてそれでも一馬に頼らないで生きていった方がいいのかも……でも寂しくなるね」
　一瞬、一馬の言葉が途絶えた。
（そりゃあ寂しいぜ？　寂しいけど……そういうのは俺の柄じゃねえだろう）
「ま、別部屋になったって様子見に行くし遊びに行くさ。普通に喋ったり遊んだり、一緒に勉強すんのだって俺は楽しかったからなー！」
「僕も……楽しかった。……そういえば一馬と初めて出会ったのはいつだっけ？」
「え？　２年前……いや、もっと前か？」
（そんな事も思い出せなくなるくらい色々と思い出を作ったんだなぁ）
　そう思うと余計に寂しくなるが、心配させるのも嫌だから顔には出さないでおこう、と遵は思う。
（鉄仮面には自信があるからね）
　明日には部屋割りが発表になる。
　部屋を去るとき自分は何と言うだろうか。一馬はそんなことを思った。
「ま、今生の別れじゃなし、部屋が変わってもこれからもよろしくっつーことで！」
（ま、けらけら笑ってまたな！　ってところだろ。多分卒業の時もそんな感じだろうな……って、なんかちょっとしんみりしちまったけど）
　荷物を整理しないといけないだろう。だが今から準備してしまうのは嫌だ。
　せめて、新しい部屋が決まるまではこのままで。