桜花寮フルーツバスケット！｜リアクション

桜花寮フルーツバスケット！

○桜花寮見学

　水上桜はちょっとばかり緊張していた。
　この春に寝子高へ入学する桜は、銀行員の父親が海外勤務となったため、桜花寮へ入寮することになっている。
　引っ越しの準備はすでに終えているので、あとは部屋割りが決まれば割り当てられた部屋へ荷物を運び入れるだけだったが……桜花寮がどんなところかまだ行ったことがなかったので、引っ越しの前に下見にやってきた。
（初めての場に一人で入るのは敷居が高いわね……）
　とはいえ、これから３年間（留年しない限りは）、ここで過ごすわけだからまずはどういう雰囲気をつかんでおきたい。
（以前に出会った寝子高の人たちから話を聞いた限りでは、悪くない感じだと思うけど）　
「えーと、男子寮と女子寮に分かれてるはずだけど」
　女子寮はどっちだろう？　と迷っていると、声をかけられた。
「新入生かい？　女子寮ならそこだぜ」
　トレーニングウェアに身を包んだツンツン髪の男子に声をかけられた。
「ありがとうございます」
「どういたしまして。楽しい寮生活になるといいな」
　なんだかヒーローを思わせる先輩の言葉に背中を押してもらった気分で、女子寮へ足を踏み入れる。
（不審人物と思われないよいうに、堂々としてなきゃ）
　と思うが、大人しめで愛らしい容姿に加えて、いかにもこの春入寮してくる新入生、といったオーラを周囲に発散させているのだろうか。
　あちこちから先輩たちの視線を感じる。
「あれ？　桜ちゃん？」　
　その時、見覚えのある少女が声をかけてきた。
（あのポニーテールは……）
　少し考えて桜は気づいた。
「あ……ミルクホールで会った？」
「うん、タルトだよ～♪　こんなところで会うなんて奇遇だね。あっ、そうか、４月から寝子高生だっけ」
　人懐っこく声をかけてきたタルトは、桜の事情を察してくれたようだ。
「はい、今日は下見に来ました」
「そうか、それじゃ案内してあげるよ☆」
　タルトについて寮内を回る。シャワールームも洗面所も、なかなか綺麗で快適そうだ。
「ここが宿直室。夜、寮母のトシコさんがいるところ。トシコさんがお休みの時は、管理スタッフのマサエさんがいるんだ。マサエさんはトシコさんより一回り若くて、結構話が分かる人でね……」
「そうなんだ……」　
　タルトは上機嫌に桜花寮の無駄に細かい情報をしゃべり続ける。
　今はよくわからないが、いつか役に立つのかもしれない、とうなずきながら桜は一通り聞くのだった。
「これで一通り回ったかな？　そうだ、お腹すいてない？」
「そういえば……」
　言われてみれば、緊張が解けたのか、桜は何となくお腹がすいていることに気づいた。

「うん、おいしい」
　タルトにを聞いたお勧めメニューを食堂で堪能する。
（ここでの暮らしは期待できそう）
　と思う桜だった。
　