桜花寮フルーツバスケット！｜リアクション

桜花寮フルーツバスケット！

○乙女のドキドキ！　新ルームメイト
　
「部屋割り変えかぁ……」
　猫目で茶色のウェーブがかかった髪の、本居陽毬はドキドキしていた。
（学年途中で転入してきて空き部屋に入れられて、ようやく今のルームメイトとの生活にも慣れたかなってところだったから不安もあるけど）
　丁寧に掃除をして、引越しに備える。
「あ、これ借りっぱなしだった……これも、好意に甘えてなんとなく共用になっちゃってたね。いままでありがとー！」
　相手の私物を返し、荷物の整理を済ませて、ドキドキしながら部屋割りを見に行く。
（でも見方を変えれば新しい出会いのチャンスだよね！　あんまり話したことないクラスメートとルームメイトになったり！　廊下で見かける別のクラスのあの子とルームメイトになったり！　今まで見えなかった一面を知ったり知られたりして、それで生まれる友情とかなんだか運命的だよね！）
　陽毬はロマンチストで乙女思考だった。
「同級生かな先輩かな後輩かな……！」
（同級生相手が変な気を使わなくて一番いいけど、先輩だとお勉強のことも訊けるしそれはそれでラッキーだよね。後輩の場合は……）
　だがそこで陽毬の思考が止まる。
（か、考えるのやめよう……何も教えてあげられないよ……）
　珠算は得意だけど、難しいことを考えるのは苦手な陽毬である。
「なんにせよ、仲良く暮らせたらいいな……あっ！」
　部屋割の紙に自分とルームメイトの名前を見つけた。

「ええっと……」
　見慣れない名前。クラスメイトではなさそうだ、と思ったとき、視線を感じた。
「あの、本居さん？　私、串田美弥子です」
　大きな目をした、前髪ぱっつんの子だ。一瞬、胸に視線が向いたと思ったのは気のせいだろうか。
「あ……新しいルームメイトの？」
「うん。よろしくお願いします！」
「よ、よろしくお願いします！」
　同級生だ、まずはよかった、と陽毬は思う。
（たまに恋バナとかしたりとかできると良いなぁ。私は話すネタないけど！！　運命の再会はどこ……）
　怪しげな占い師に「寝子島で運命の再会が待っている」と言われて寝子島にやってきた陽毬だが、肝心の幼い頃の友人達の名前も顔も全然覚えていないのだった。
「それじゃさっそく部屋へ……ふ、ふぇ、ふえぇ……」
　そう言いかけて体をゆすりだした美弥子に、陽毬は首を傾げる。
「どうしたの……わっ？」
「ぶえっくしょい！！」
　美弥子のくしゃみで食堂に暴風が巻き起こった。
「ご、ごめんね……」
　ポケットからティッシュを出して鼻をかむ美弥子。
（部屋のお掃除、頑張ったほうがいいのかなあ……一緒にラーメン食べるときも気をつけなきゃ）
　そう思う陽毬だった。