桜花寮フルーツバスケット！｜リアクション

桜花寮フルーツバスケット！

○新しい運命

「今までありがとな～」
　おっとりとした関西弁で、マリベル・ロイスは今までのルームメイトの子に声をかけた。
（別れるのはちょっと寂しいけど、これも運命や）
　一緒に部屋の掃除をして今までのお話をしながら別れを惜しんだ。
「寮生活も２年目やー！　今年はどうなるんかな？」
（ウチの親戚もいっぱい兄弟いるから、いいお姉さんキャラの子と一緒に生活できたら毎日楽しくなりそうや）
　そんなことを思いながら部屋割りを見に向かった。

　小柄でサイドテールの小山内海は、スケッチブックに別れの挨拶を書きこんだ。
　声を出すことはできないけど、今までのルームメイトと笑顔で別れを惜しむ。
（今度のルームメイトはどんな人だろう？　友達になってくれると嬉しいな）
　期待に胸を膨らませながら新しい部屋に移動すると、見覚えのある金髪ロングの少女がいた。
　１年の時からのクラスメイトのマリベルだ。
「オーラ！　マリベルや。これからよろしくさんやで♪」　　
『こんにちは、小山内海です。よろしくお願いします！』
　スケッチブックで筆談する。
『同じクラスだよね。マリベルちゃんのしゅみは何？』　
「趣味かー、うちの趣味つうか専門はティンパニや。あと得意料理はたこ焼き！　関西のことには詳しいで。小山内ちゃんは？」
『わたしはクロッキーがすき。ティンパニ、こんど聞きたいな』
「絵が専攻なんやね。うちはニャンスタグニャムに写真載せまくってるけど、小山内ちゃんは代わりにスケッチしとるわけやな。イケメンの絵とかある？」
『イケメン……かよくわからないけど』
　少し考えて、海は赤くなった。
「イケメンの絵、あるんやな？　見せてえな！」
『えーと……恥ずかしいな』
「もったいぶらんでもええのに……じゃ、まずはうちのニャンスタグニャム見てや！」
　スマホを見せてもらった海は、目を輝かせた。
　美味しそうな料理はもちろん、ピアノを弾くおばさんの姿だったり、レコードをかけるお兄さんの姿だったり。
『すごい、今にも音楽が聞こえてきそうだね』
「わかる？　音楽を写真で伝えるっていうテーマなんや」
（明るいルームメイトさんで良かった）　
　と海は思う。
　甘えん坊の海は、孤独が苦手だ。
　川沿いの桜並木であったり、川を流れる桜の花びらであったり、堤防の土手に生えているつくしは妹系で子供っぽい性格だが、海より背が高くてお姉さんに見える。
（仲良くやっていけるよう、頑張るで～）
　マリベルも思っていた。　
『じゃ、わたしのスケッチも見せるよ』
　海がスケッチブックを開いた。
「おー、桜並木や！　さすが上手いな」
　川沿いの桜並木や、川を流れる桜の花びら、堤防の土手に生えているつくし。
　春を切り取ったようなスケッチに、マリベルも夢中で見入っていた。