桜花寮フルーツバスケット！｜リアクション

桜花寮フルーツバスケット！

○食欲系男子の出会い

「ふーん、こういう形でルームメイトが変わるってのもなんか面白いな」
　水守流は、眠そうな目でつぶやいた。
　髪に寝癖がついているが、別に寝ていたわけではなく通常運行である。
（そういや今のルームメイトともこれで最後になるのか。思えばろくに話もしてなかった気が……ってかあいつもほとんど部屋にいなかったような？　……少し気まずいな）
　だが過ぎたことを悔やんでも仕方ない。
「次のルームメイトとはもうちょい交流深めれるように努力もしておこう……」
（問題は、新しいルームメイトが気が合う奴かどうかって事か。ま、この寮基本的にそんな悪いやついないし、なんとかなるべ）
　が、流はある可能性に気づく。
「あ、でも先輩か後輩と一緒になる可能性もあるのか……」
（後輩はともかく、先輩と同部屋だと気を使いそうだな。あ、でもいい先輩ならちょくちょく飯とかおごってくれるかも？）
　食べても太りにくい体質のためそれなりに食べても体型があまり変化しない流である。
「何にしても誰が同室になるか楽しみにしておこう。一人部屋になったらそんときはそんときで悠々自適にできるしな」
　そんなわけで流は部屋割りを見に向かった。

「部屋替えの季節らしいが……面倒なのでこのままでいいか……」
　ボサボサ髪の優木遥斗がつぶやいた。
　途中から桜花寮に入ったこともあり、二人部屋に入ったがずっと一人だった。
（一人部屋もあるようだが部屋を移るのは面倒だし、居心地が良くて気に入っているからな）
　とはいえ私物はきっちり部屋の半分以上には置かないでいる。
　そもそも授業や部活以外の私物はあまりないのだ。
　早寝早起きで朝は部活の朝練、放課後も部活。
　春休みは昼間アルバイトをするので実質部屋にいるのは寝る前の数時間程度。
　というわけであまり部屋を使っていないのだ。
（もったいない気はするが……）
　積極的に人と関わるタイプではないので相部屋を呼びかけたりはしない。
　もしも誰か部屋に入っても干渉は一切しないつもりだ。
　いなければそのまま一人で部屋を使おうと思っている。
　そこへ、ノックの音がした。
「はい？」
「あー、同室になった水守だ、よろしくな」
　見覚えがあるクラスメイトが立っていた。
「……優木だ。よろしく」
（元から住んでる奴のところへ入り込むってやりにくいな……ま、片付いてるし気にしないことにするか）
　そんなことを思いながら流は荷物を運び入れる。
「片付けがあるようなら手伝うぞ」
　遥斗が言った。
「いいのか？　助かる」
「意外かもしれないがこう見えてきれい好きでな」
　その言葉通り、遥斗はてきぱきと手伝ってくれた。
（いい奴かもな）
　部屋が片付くと、夕食の時間になっていた。
「……夕食、行くか？」
　流が声をかけると、遥斗は頷いて立ち上がった。
（仲良くなるにはまずメシからだよな）
　そう思った流は、遥斗の食事の量に驚くことになった。
「おいしいものは好きだ。部活で腹が減るしな」
「俺も食べるのは好きだぜ……しかしこの納豆の酢の物って、チャレンジャーすぎないか？」
　食堂のおばちゃんの試作品には、たまにものすごいものがある。今回は残念だったようだが……
　遥斗は顔色一つ変えずに食べている。
「おいしい」
「マジか……」
　遥斗の味覚は正確ではないらしく、基本的に食べられるものはすべて「おいしい」となる。
（まずいものが平気ってある意味特技かもな……）
　と思う流だった。　

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