桜花寮フルーツバスケット！｜リアクション

桜花寮フルーツバスケット！

○部屋割り発表！　あれ？

「日当たりのいい部屋だといいな……」
　食堂に向かいながらスピカがつぶやく。
　日の光が好きなのと、万一怪我をしても空が見えればろっこんがすぐ使えるためだ。　
「僕は窓の外に、猫が飛び移れる樹があるところが希望だよ」
　ろっこんで猫に変身できるタルトも言う。
　食堂の壁に人だかりができている。
　貼りだされた部屋割りの紙に、自分と並ぶ名前を見つけてスピカは息を呑んだ。
（もしかしたらもしかするのかもしれない）
　運命。そんな言葉が頭をかすめる。
「僕たち縁があるのかな？」
　隣でタルトが笑っていた。
（部屋割りが分かってたら引っ越し準備もしなくてよかったのに）
　とは思いつつ。
「嘘じゃ、ない……？　やった……！！」
　素直に喜ぶスピカにタルトが言う。
「これからもよろしくね。一緒の写真は新しい部屋に飾ることにしよう」

　瑠奈と侑も、ドキドキしながら食堂にやってきた。
　発表された部屋割りに、二人は同時に自分の名前を見つけた。
「……えっ？」
「あったにー！　あれ？」
　瑠奈は突然大笑いした。
「あははははっ！　昨日すっごい思い出掘り返したのに、なぁにこれ」
　隣にいた侑も一緒に笑ってしまった。
「あはは！　あんなに昨日最後だと思って話したのにもー、あれはなんだったの！」
「結局ルームメイトは侑ちゃんだったね」
「うん」
　最高の気分でひとしきり笑った後、侑は言った。
「それでは改めてまして、よろしくね瑠奈！」
「またよろしくね！」
　瑠奈が手を伸ばし、二人はがっしりと握手を交わした。
（この不思議がいっぱいの島で、同学年のあたしたちがもう一度同室になるくらいはささやかな偶然なのかもしれない。でも）
　そんな思いが胸をよぎる。
（最高に嬉しい奇跡だよ）

　同時に発表された男子寮の部屋割りの前では。
「「って、またオマエかー！」」
　春彦と檸檬が顔を見合わせてハモっていた。
「どんだけ俺の事好きなんだよー楢木っ」
　興奮した檸檬の言葉に、同じくらいハイになった春彦が言い返す。
「つーかそれは俺の台詞だっつーの！　ホズミヤこそ俺と離れらんねーんじゃねぇのかよ！？」
　周囲から好奇の視線が飛んできたが、それどころではない二人。
「ま、来年も宜しくな？」
「おう」
　檸檬が手を差し出すと、春彦は握手の後、がっしりと肩を組んできた。
「お別れ会した意味なくなったけど、また冷蔵庫の中レモンで埋めるから！」
「こっちもやられっぱなしじゃねーからそのつもりでな！」

（戻ったら掃除をして荷物を整理しないと……）
　そんなことを思いながら、遵は食堂にたどり着いた。
　一馬は、遵の周囲にさりげなく目を配りながら一緒に慎重に食堂まで進んできた。
　おかげで遵のケガは、廊下で転んだのと階段で足を滑らせた程度で済んだ。
　どれだけ気をつけても毎度のことだ。
「さて、新しいルームメイトは誰かなっと……あり？」
　一馬が一瞬静止する。その理由を、遵もすぐに知ることになった。
「一馬だ……変わらず……」
　ぽかんとした後、嬉しさと、折角の決意は何だったんだろうというやるせなさが一緒にこみ上げてきた。
　一馬ががしがし頭を掻きながら言う。
「ま、誰になったってそりゃあ悪いことなかったと思うけどさぁ……やっぱし２年一緒にいて楽しかったしな」
　一馬も、同じような気持ちなんだろうか？
「俺はまたお前と一緒でラッキーだったぜ！　まぁ正直、寂しいのは間違いなかったしさ」
　そして、まっすぐに遵に笑顔を向ける。
「これからも１年よろしくな」
「うん……一馬今年もよろしくね」
　今は顔に出していいんだよね。
　ガチャン。
　そんなことを考えていたら、不意に落ちた茶碗のお湯がかかった。
「大丈夫か？　……ケガしないうちに部屋に戻るか」
（こんなラッキーがあったんだから、このくらいの不運は全然問題ないよ）
　そんな言葉を飲み込む遵だった。

　
　