R&R Agency：File04：ウジョニャウの怪｜リアクション

R&R Agency：File04：ウジョニャウの怪

● ２日目：廃校裏手へ

　蜘蛛に変身できるまもるが校内の監視を続けることにして、それ以外の一同は校舎を出た。
　校舎のゆがみや足跡の様子を観察しながら、昨日ウジョニャウを見失った校舎の裏手へと回る。
　例の獣道は、昨日同様そこにあった。
　円が獣道の前にしゃがみ込んで、宿で用意してもらった塩抜き済みの白身魚の切り身をちらつかせながらウジョニャウを呼ぶ。
「ウジョニャウー。ワイロだよー！」
「おーい。ウジョニャウ。話せばわかる。出て来いよ」
　亮も円と並んで呼びかける。
　亮は宿にあった大きな籐籠を借り受けてきていた。対話できない場合は捕獲するためだ。
　ふたりはしばらく呼びかけたが、ウジョニャウが現れる気配はない。
　四人は話し合い、獣道を辿ってみることにした。

　小柄な亮を先頭に、円、美咲紀、刀の順番で、這うようにして狭い獣道に潜入する。藪の中を５分ほど這っただろうか、道は突然行き止まりになった。そこは山の斜面だった。土砂崩れを起こしたらしく、褐色の地面が露わになっている。その地面には大きな穴が黒々と口を開けていた。穴の直径は１メートル以上あり、穴の周りにも亀裂が入っていて崩落した様子がうかがえる。
　亮は穴の中を確かめようと近づいていく。
　そのときだ。
　穴の中から、大きな褐色の塊が飛び出して来た。
　背中の縞は交差し綾を描いている。昨日見た猫と同じ！　ウジョニャウだ！
　飛びかかられた亮は、格闘技で鍛えた動体視力で体当たりを避け、籐籠の中にウジョニャウを捕獲する。
「頼む。落ち着け」
　亮が籐籠を押さえつけながら声を掛ける。
「俺たちは話をしたいだけなんだ。事故について何か知らない、か、って……ええっ？」
　籐籠の隙間から、煙のようなものが染み出てきて、猫の形に変化する。元通りの姿に戻ると、ウジョニャウはシャアアッと口を耳まで裂いて、亮たちを威嚇した。
「ウジョニャウってほんとに妖怪なんだ！？」
　円は目を瞠った。これは何としてでも撫でてもふもふしたいと思い、ウジョニャウに抱きつこうとする。が、ウジョニャウはそれをよしとせず、巨体に似合わぬ素早い動きで円の腕を避け、逆に体当たりを喰らわせた。
「ううー。敵じゃないよー。捧げものもあるよー」
　静かに見守っていた刀も、ウジョニャウに話しかける。
「お前達の大切なものを傷つけるつもりはない。ただお前達が何を護りたいのかが分からないから注意できないんだ。何を護りたいんだ？」
　だが、いくら呼び掛けてもウジョニャウが対話に応じる気配はなく、厳しい見つめ合いが続くばかりだ。
　風が吹き、ウジョニャウが動いた。
　身を翻し、穴の中に飛び込む。
「あっ！」
　穴はほぼ垂直に落ち込んでいるようだった。中を覗き込むが、相当深いようで底が見えない。

　そのとき美咲紀の携帯が鳴った。修からだった。
「向こうも何か進展があったみたいです。いったん戻って合流しませんか？」