R&R Agency：File04：ウジョニャウの怪｜リアクション

R&R Agency：File04：ウジョニャウの怪

● ３日目：解決

　翌日、廃校の周辺は一日中大騒ぎだった。廃校地下の洞穴から大量の白骨が見つかったという一報を受け、警察が駆けつけ、役場の人が駆けつけ、なんとかいう大学の先生が呼ばれ、マスコミまでやって来た。島中の人も野次馬に集まったのではないかというほどだ。
　のちにニュースで知ったところによると、校舎下の穴と校舎裏の穴は地下でつながった洞窟で、大昔、海底火山が噴火してこの島が誕生したときにできた風穴であるということだった。白骨は２５０年～３００年ほど前のもので、ウジョニャウの伝承にある通り、飢饉や流行病などで亡くなった人々を埋葬したものと思われた。入り口の穴は人為的に塞がれていたが、数年前の土砂崩れのせいで地盤が緩み、数百年ぶりに露わになってしまったようだ。
　爆弾で亡くなった人の祟りという噂は見る間に消え、代わりに、ウジョニャウは大昔島で起こった悲劇によって亡くなった多くの死者たちの無念を伝えていたのだ、という話にすり替わった。祟りの話は古い歴史の話になり、夕方には、戦争時に爆弾で亡くなった先生と生徒のことは誰もが忘れてしまったかのようだった。
「ありがとうございます。これで叔母も一安心でしょう」
　一三夫は深々と頭を下げ、約束通り宿泊料金はいらないと言った。
　
　Ｒ＆Ｒのメンバーは、事件解決が思いのほか早かったので、丸一日、海や温泉でバカンス気分を満喫した。
　夕方、騒ぎがようやく落ち着いたのを見計らって、エヴァと夏朝は慰霊碑をお参りした。
「なんだか、人の噂の儚さを思い知るわね」
　エヴァは聞き込みの最中に買っておいたお線香に火をつけ、慰霊碑の前に捧げる。
　夏朝も両手を合せ、それから校舎を顧みる。
「なんとなくだけど。ウジョニャウは、ただ見つけてほしかっただけじゃなくて、工事する人たちに危ないよって知らせたかったんじゃないかな。だって、あんなに地盤が脆くなってたなら、重機で作業するのは危なかった。……地面が抜けて、みんな穴に落ちて、大事故になったかも」
　意思疎通はできなかったけど、ウジョニャウにも人を想う気持ちがあったと思いたい。
「おーい」
　利平が昨朝採ったカサゴの一夜干しを手にやってきた。
「これ、ウジョニャウにお供え物。穴の周りは騒がしいから、慰霊碑のとこに置かせてもらうかな」
　魚を供え、手を合わせる利平の隣で、夏朝もまた瞼を閉じて祈る。
「ウジョニャウが……かつて無念に死んでいった人々が、安らかに眠りますように」

◇

　翌日、Ｒ＆Ｒのメンバーは島の人々の感謝の見送りを受けて島を発った。
　一行と別れ、ひとり島に残ったさゆるは、シャツを脱ぎ捨て水着になり、人気のない海の水面に海月のように揺蕩い続ける。南の島で、何もかも忘れたかった。儚く海に溶けてしまいたかった。
　海は青く、雲は白い。
　この島は一足早く夏がやってきている。

　――その後、島ではウジョニャウの噂はぴたりと消えたという。

＜了＞

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あとがき

担当マスター：笈地行
ファンレターはマスターページから！

久々のＲ＆Ｒに、ご参加ありがとうございます。
結果ですが、１日目の午後を有効利用なさった方が多くて、
３日目になる前に事件が解決してしまいました！
島はしばらく大騒ぎかもしれませんが、次第に収束してゆくことでしょう。

ウジョニャウって変わった言葉ですよね。
由来についてのアクションを掛けてくださった方も多かったので裏話を……

ある朝読んだ新聞に、妖怪の記事が載っていました。
――『ウジョニャウ』！？
音の響きが変わってるし、背中が綾模様の猫の妖怪って面白い！
この妖怪を題材に、なにかお話作れないかしら……。

……ということで出来たのが、今回のシナリオでした。
今回訪れた温泉のある南の島はフィクションですが、
『ウジョニャウ』の話は実際に鹿児島県に伝わっているそうです。
もしも出会ってしまったら……通行の邪魔をしないように気を付けてくださいね。

Ｒ＆Ｒはこれからも続きます。また変わった事件でお目に掛かれれば幸いです。
それでは、またのご縁を楽しみに。笈地でした。

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