R&R Agency：File04：ウジョニャウの怪｜リアクション

R&R Agency：File04：ウジョニャウの怪

● １日目夜：男の露天風呂

　野趣あふれる石造りの湯船に身を沈め、御剣刀は温泉を堪能していた。
　宿自慢の露天風呂だ。
　仰ぎ見れば満天の星。星に詳しければ寝子島とは違う星座がわかるのかもしれない。
　湯は透明でとろりとしている。舐めると少し塩っぽい。
「んー！　最高だな」
「そうだね」
　純白の髪をタオルでまとめ上げ、うなじも露わなサキリ・デイジーカッターが、刀の隣に腰を下ろした。
「ウジョニャウっていう奇妙な名前の由来について、実は僕も考えてたんだ。例えば僕達『もれいび』は、もとは『もらい火』だろう？　同様にウジョニャウも本来の意味が訛った呼び方かと思っていたんだよね。たとえば、『少女に会う――うじょにあう――ウジョニャウ』みたいな」
　実際はその予想とは違っていたので、サキリはちょっと照れ臭そうに笑う。
「うじょにあう　か」
　刀は、寝子島にいるであろう二人の少女の姿を、無意識に思い浮かべる。そういえば冬に行った温泉では超ラッキーなことがあったりもしたが……いやいや、今回は混浴ではない。
　とそのとき、惚けていた刀の耳朶に、甘い声が注ぎ込まれた。
「ふ、ふふ」
　右目を黒髪で隠した美青年、アケーチ・タッマーキ――ここでは明智と名乗っている――がいつの間にか隣にいた。口元が三日月のように弧を描いている。その笑顔は上品かつ妖艶だ。肌も白磁のようにきめ細やかで、全身から貴族的雰囲気を醸し出している。
「温泉、裸の付き合い、っていいですよね」
「お、おう」
　刀は妙に気恥ずかしくなって鼻先まで湯に沈んだ。
「そ、そういえば明智さんは、ほしびと……なんですよね？」
　思わず敬語になるサキリ。ふだんは人間のふりをしているアケーチは、Ｒ＆Ｒのメンバーには、ほしびとであることを明かしていた。
「そうです。寝子島をフラフラしていた所、スカウトしていただきました。御恩をお返しできるよう、精一杯頑張ります。徳丸さんの叔母様の祟りの話をなくし、ウジャニョウも悪霊ではなく護り神的な存在となれれば良いですね」
　ざばっとしぶきをあげて立ち上がる。
　月明かりに照らされたアケーチは、お尻のかたちがキュートだった。
「少しでも徳丸さんの心のモヤが晴れますように……尽力いたします、ふふ」

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