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【お花見】しづ心なく花の散るらむ
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ボートを舫うロープを引いた。
岸から朝比奈岳人がたぐり寄せると、ボートはするすると犬の玩具のようにして滑ってくる。
「あっ」
緋紅朱赫乃がか細い声を上げた。舟がぐらっと傾いたのだ。
「やあ、これは失敬」
くしゃくしゃ髪の少年(鷹取洋二)が漕ぐボートが、すぐ目の前を横切ったためである。
けれど岳人は落ち着いて、
「揺れても大丈夫」
と告げた。俺がいるから――そう告げたい気持ちもあったのだけれど、あまり雄弁ではない自分を省みて、言葉にしてしまうとたちまち空虚になるような気がしたので岳人はそれ以上語らなかった。
岳人は舟に移った。
「緋紅朱さん」
呼びかけて手を伸ばす。ここで手を差し出すのは自然なことだ。
赫乃がその手をつかんだのも、自然なことだ。
なのになぜか手と手に強張ったような力が、籠もってしまったのはなぜだろうか。
ボートに腰を下ろそうとする彼女の、ゴシックドレスに岳人は眼を向けた。古びたボートと見比べる。
「ちょっと待って」
そうして岳人は、鞄から白いハンカチを出して席に敷いたのである。
「先輩……?」
呼びかけられて初めて、岳人は己の行動に気がついたように、
「あ……いや……汚れるかな、と」
と言葉を濁した。
自分でもどうしてそんな事をしたのかよく分からない。
どう言うべきなのかも。
さざ波を起こしながら、二人を乗せたボートは進む。
なんとなく硬かった彼と彼女の表情も、いつしか柔らかみを帯びてきた……と、いうのに、
「おっと、またまた失敬。ごめんよ」
洋二のボートがまたぶつかりそうになり、岳人は慌ててこれを回避したのはいいが、おかげで舟は木の葉のように揺れてしまった。
「きゃっ」
小さな声を上げて赫乃は腰を浮かせてしまう。そのままどっと倒れ込む。
倒れ込んだ先は、岳人の胸の中だ。
「……あ、先輩、すみません……ちょっと、そのまま、で……」
見た目は華奢な岳人なのに、と赫乃は思った。
抱きとめてくれた彼の腕はがっしりとしまっている。胸板も厚い。そしてなにより、温かい。
そのことを意識すればするほど、赫乃は身動きできなくなる。
「迷惑、でした、か……?」
「いや」
岳人は首を降った。
薄く儚く淡い小さな花を受け止めたような気がする。
あえて近い存在を言えば桜だろうか。まだ小ぶりの桜の木。
されど小さくとも、咲けば圧倒的な存在感を生むのが桜なのだ。威風堂々とした並木も、一本で立つ大木もそれは変わりない。
しかも一斉に散るのが桜なのだ。ふと岳人は思いを馳せる。
咲くときは唯一絶対、だが散るときは潔いのが桜だ。日本人の……特に武士の心構えは桜に喩えられるが、多分、由来は桜のそうした性質にあるのだろう。
とすればこの、いま自分の腕(かいな)の下にある彼女をどう解釈すべきか。
そんな思考の迷路より抜け出すべく、岳人はそっと赫乃を離した。
「もう大丈夫?」
「大丈夫、です……ありがとう、ございました。ごめんなさい」
恥じらうようにうつむきながら、赫乃は小声で問いかける。
「朝比奈先輩……新学期が、始まったあたりで、私の、薔薇園を、見に来てくれます、か?」
「薔薇の園?」
「はい。もう少ししたら、薔薇が一番、綺麗な、時期だから……見て、もらいたい、です」
「うん。必ず行くよ」
先日、彼女を花だと感じたことを岳人は思い出す。
今、桜に重ねたことも考える。
だが、この花には、桜のように散るのではなく、ずっと咲いていてほしい思う。
「お二人で何やってるんですか?」
岸辺にやってきたボートに羽生碧南が問いかけると、ごく当たり前のような顔をして洋二が答えた。
「クルージングだよ」
「クルージングって、お前……」
海原茂のほうはその考えにあまり賛成ではないらしい。
「たまたま休みでヒマで、他に空いてる人間がいなかったからこういうシチュエーションになっただけだ」
茂は言いにくそうにそう告げたものの洋二は容赦がない。
「先輩友達少ないですからねえ」
「そんなことはない!」
「シーサイドアウトレットのときの後輩なんて、今じゃ電話着拒されてるって話ですし」
「されてない! ていうか電話してない!」
「今日だって北風前風紀委員長にすら断られたでしょう」
「だから北風にも連絡してないって! あんまり失礼なことばかり言うんなら帰るぞ!」
ははは、戯れですよ戯れ、と茂をなだめて洋二は碧南に顔を向けた。
「というわけで男子オンリーだと寂しいと先輩がおっしゃってるので、羽生くんも乗らないかい?」
「え? あ……はい」
どうしてだろう、と碧南は思う。
誘いは嬉しいのだけど、緊張する。
川面に浮かぶ桜をかきわけるようにして、ボートは進んだ。
今ボートを漕いでいるのは碧南だ。洋二の漕ぎ方は相変わらず下手すぎ、茂はなぜか漕ぎたがらない(その理由は後に明らかになる)ので、必然的な結果というわけだ。
ゆっくりと川を流しながら、とりとめのない話に花を咲かせる。
「大学のサークル活動か? あまり考えてないな……まあ、形だけでもどこかに籍を置きたいとは思っているが」
碧南の質問に答えながら、茂はずっと透明な水面を見ている。
「羽生はバスケ選手だったな。今年も部活は続けるのか?」
「はい、今年はインターハイ上位を狙ってみたいです」
「羽生くんは本番に強いっていう話だからねえ。楽しみだよ」
「ど、どうも……です」
困った――碧南は掌に汗をかいている。それは決して、オールが重いからではないのだ。ボートのほうは、あまり力を入れなくてもすいすい進む。
――海原先輩とは普通に話せるのに、鷹取先輩と話していると、なんだか詰まっちゃう……。
以前はこんなことはなかった。洋二を意識するようになってから、こんな風になってしまった。不自然とか思われていないか、嫌われていると誤解を与えていないか、そんな風に焦れば焦るほど、ますます言葉はもつれ、声は意味をなさなくなってくるのだ。
ゲームであれば会話中に選択肢が出る。どれを選べば正解かは、碧南はほぼ間違えない。けれど海千山千の乙女ゲーマーであっても、リアル恋愛のほうはルーキー同然なのだった。
岸が近くなってきたところで、突然茂が立ち上がった。
「悪いが」
茂は口元を押さえている。
「ちょっと船に酔った。先に降りさせてもらう」
平然としているから気がつかなかった。だがよく見ると、茂の顔色はあまり良くない。
「おっと、先輩、大丈夫ですか?」
洋二が見上げると、こくこくとうなずいて茂はひらりと岸へ飛び移っている。
「少し休む。また後でな」
そうして茂は、土手に体育座りして手を振ったのだった。
「ああ、えっと……海原先輩、だ、大丈夫でしょうか……?」
「まあ船酔いは陸に戻るとすぐ収まるというから、そう心配することもないと思うよ。しかし先輩、あの様子じゃかなり我慢していたようだねえ。あの人も変に意地っ張りなところがあるからなあ……」
洋二は苦笑していた。彼のほうはなんともリラックスしている様子だが碧南はそうもいかない。
――うわ、予想外の展開……!
突然ふたりきりになるなんて、思ってもみなかったからだ。
どうしよう、何を話せば、と気が急く彼女に、洋二のほうが水を向けてくれる。
「いよいよ新学期だねえ」
少し碧南は楽になった。ちょうど、聞きたい話もあった。
「あの……先輩は今年で3年生ですよね? もう進路とか決められました?」
「いや全然」
洋二はふっと目を細めている。
「なるようになると思ってるからさ」
なるようになる、かあ――その言い方が、実に洋二らしいと碧南は思った。
そう自分も達観できればいいのだが。
碧南と洋二を乗せたボートは、ゆっくりと進み続ける。
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シナリオデータ
担当ゲームマスター
桂木京介
シナリオタイプ(らっポ)
シルバーシナリオ(150)
グループ参加
3人まで
シナリオジャンル
日常
恋愛
オールジャンル
定員
1000人
参加キャラクター数
117人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2017年05月20日
参加申し込みの期限
2017年05月27日 11時00分
アクション投稿の期限
2017年05月27日 11時00分
参加キャラクター一覧
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