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全力全開、うさばらし
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この世の終わりも斯くやな重たい溜息をひとつ吐き出し、
千歳飴 楓子
は目についたベンチに腰を下ろす。当然のように手にしていたスマートフォンを膝に乗せ、画面を立ち上げる。画面をずらりと埋めるゲームアプリのアイコンの中から選び出してタップするのは、イベントが二週間限定で行われていたアイドル育成ゲーム。
はぁ、とまた重たい溜息が落ちた。画面に現れたテロップには、今回のイベントにおける楓子プロデューサーの総合順位が示されている。
(……まさかイベント終了時刻とバイトが重なるとは……)
イベントが始まってからの二週間というもの、クエストのために消費する体力をほぼ余すことなく使って地道にポイントを集め続けていたというのに、バイトに勤しみスマホに触れずラスト一時間貼り付けなかっただけで、他のプロデューサーたちに一気に順位を抜かれてしまった。
おかげでランキングはガタ落ち。ランク上位者に配布されるキャラクターもガチャチケットも手に入れられなかった。
はぁぁ、と肩を落とす。今回に限らず、その前は推しキャラのピックアップガチャを課金限度枠いっぱいまで引いて見事に大外れ、いわゆる盛大な爆死をかました。更にその前はゲームメンテナンスの延長でスタートダッシュが出来ずランキング上位に滑り込めなかった。
落とした肩を震わせ、楓子は水色の瞳を憂鬱に伏せる。重度のスマホゲーム中毒者には、この状況によるストレスはあまりに過度すぎる。
(何かで解消できないものか)
内側を水色に染めた黒髪を肩から滑らせ、視線をもたげる。
バイト帰りに通るシーサイドタウン駅ビルmiaoはいつもながらの大賑わい。春休みな今は、午後のお茶に繰り出す女子たちに、時間に追われて駅に駆け込むサラリーマンに、買い物に勤しむ奥様方に、様々な人々でごったがえしている。
ぐるりと巡らせた楓子が視界に捉えたは、右側に春風に純白の髪をなびかせ人込みを颯爽と歩く柔和な表情の男子がひとり、左側に毛先にいくにつれて金から桃に色を変える華やかなくるくる巻き髪を楽し気に跳ねさせながら、華奢な手に買い物袋を下げて軽やかに歩く少女がひとり。
「……おや」
正反対の方向から歩いてきたふたりは、ほぼ真ん中に位置してベンチに座る楓子の前でばったりと出会い、足を止めた。
「……」
正面に立つ長身の少年を桜色の瞳でほんの一瞬見遣り、
天宮城 因
はその一瞥も無かったかのごとく踵をくるり、ベンチに座る楓子へと向ける。
「わぁ、こんにちは楓子さんっ! 因、今日はお買い物ですっ」
鈴を転がすような明るい声で笑い、楓子に寄り添うようにベンチに座る。
「因にピッタリのお洋服、探してたんですぅ」
「そうか」
気だるげに頷く楓子の腕に細い身を寄せ、因は楓子がマイペースに触り続けるスマホ画面を無邪気な様子で覗き込む。
「ちょっとユーウツになっちゃったときは、お買い物で発散! ですよねっ」
「何かあったのか」
スマホ画面を見下ろしたままなおざりに問われても、因は貼り付けた笑顔を崩さない。
「ひみつですぅ」
唇に人差し指を当てて見せながら、
(休みまでこのキャラ保つの疲れんだよな)
そんなことを思っているとはおくびにもださない。
(……なんかいい感じに憂さ晴らしできるもんねーかなー……)
長い睫毛をしばたたかせた因が見るのは、素知らぬ顔で横を通り抜けて行こうとする白い髪の少年。
(折角だしこいつで発散しとくか……)
無視して楓子にだけ声を掛けたものの、鬱憤晴らしに使うのならば楓子よりもこちらの少年、
如月 蘇芳
の方がいい。
何と言っても同類のにおいがする。裏表のある人間特有の本心を隠して微笑む瞳をしている。
「こんにちはっ、すおーさんっ」
恐ろしく明るい、聞きたくなかった声に名を呼ばれ、蘇芳は歩き去ろうとした足を否応なしに止めざるを得なくなる。聞こえなかった振りをすれば、後々学校で出会ったときに何を言われるか分かったものではない。
(息抜きに外へ出たと言うのに)
カフェでゆっくりコーヒーでも飲もうかと思っていた。それとも新しい本でも買おうかと。
それなのに、と純白の睫毛を一度伏せる。鬱陶しい、と思う本心を柔らかな笑みに覆い隠す。
「春休みなのに奇遇だね」
一年後輩の少女ふたりと向き直る。
「まあできれば因君には会いたくなかったんだけど」
学校であろうと家の中であろうと、人の良い優等生を常時演じ続けることにストレスを溜めこんでいた反動か、うっかり本心が漏れ出てしまった。
ぽろりと零れた毒に反応したのか、因が仮面のようなにこにこ笑顔で立ち上がる。
「せっかくのお休みなのに一人でお出かけなんて珍しいですねぇ?」
少女を模した華やかな笑顔の裏に潜む腹黒さが透けて見えて、蘇芳は赤い瞳を細めた。仮面が剥げがちになってしまうのは、互いに同族嫌悪しあっているがためか、それとも互いが何かしら疲れてストレスを溜め込んでいるがためか。
「いっつも女の子の一人や二人くらい連れてるのに……とうとう真っ黒なお腹がバレて逃げられちゃったんですかぁ?」
「別に逃げられたわけじゃないよ。それより因君も一人なんだね。それこそお友達がいないからかな?」
朗らかな笑顔と穏やかな口調で、見た目華やかな美少女と一見優し気な美少年は言葉の毒針でちくちくと刺し合う。
「因はお友達と遊びに行くときのお洋服を買いに来ただけですもんっ! それに、因はみんなのモノだからボーイフレンドなんていないんですよぉ、おしりの軽いすおーさんと違って!」
可愛らしい高い声と膨らませた桜色の頬で因がまくしたてれば、
「尻軽なのは因君の方じゃない? まあ見た目からしてそうだもんね」
優しく冷たい声と物静かで柔らかな笑みで蘇芳が返す。
放っておけば日が暮れるまで続きそうなふたりの罵り合いを止めたのは、
「そうだ。三人で映画を見ようと約束していたな」
スマホゲームの操作にひと段落をつけた楓子のひとことだった。
「ここで出会った奇遇を利用しない手もない。それに」
楓子はスマホのリズムゲームで神業得点を叩きだす白い指を伸ばした。どこか渋いような顔をする蘇芳と、きょとんと瞬く因との間を裂くかたちで伸ばす指が示すのは、駅ビルmiaoの壁に貼られた映画のポスター。ほど近い場所にある複合映画館で上映中ないくつもの映画のポスターを見比べ、楓子はうきうきと立ち上がった。
「さて、どの映画を見ようか」
「そう言えばホワイトデーにお約束しましたねぇ?」
蘇芳と絶対零度の言い争いをしたことも、ホワイトデーの約束時に思ったことも全くなかったような花咲く笑顔を浮かべ、因は楓子の隣に並ぶ。
「折角ですし行きましょっか」
「お? これはどうだ?」
腕に因をしがみつかせた楓子が示したのは、『衝撃の問題作!』と銘打たれた各方面で話題沸騰中のグロスプラッタホラー映画。
錆びた刃と血と、ぬめぬめぬらぬらしたナニカといわくありげな洋館が描きこまれた全体的に赤黒いポスターを興味津々に輝いた瞳で見つめ、楓子は因と蘇芳を見遣る。
「ええ、因はこんなの怖くて見れないですよぉ」
「随分と……エグイものを見るんだね」
「『飛び散る手足と内臓、響き渡る狂笑は最早誰にも止められない――』……ふむふむ。よくわからないがとりあえずこれを見よう」
ポスターの煽り文句を淡々と読む楓子に、因がぎゅっと抱き着いた。
「きゃーっ、怖いです楓子さんっ」
怯えた風でありながらどこかしら楽しそうな因を横目に、蘇芳は小さく息を吐く。
こういう映画はえてして騒がしいものが多い。血飛沫もホラーも大して怖くはないが、騒々しい叫び声を聞かされるのは苦手だった。
「あんまりそういうのは得意じゃないんだけど……まあ、いいかな」
「ストレス解消にはこういう映画が一番だ。何より楓子はこれが見たい」
映画館向けて歩き出す楓子と、因は仲良く手を繋ぐ。
「怖かったら楓子さんに抱きつかせてくださいねっ」
「構わない」
「きゃあ、ありがとうございますぅ」
はしゃいだ声をあげてから、因はちらり、後ろの蘇芳を振り返った。笑顔は笑顔でも楓子に向けるものとは全く違う、冷え切った険を孕んだ眼差しを叩き付ける。
「あ、すおーさんには指一本触れないので安心してくださいねっ」
「俺の方こそ願い下げだよ」
肩越しに繰り広げられる冷戦を全く気にも留めず、楓子はひとりマイペースに親睦会と銘打った三人での映画鑑賞に心を躍らせる。
「さあ、チケットとポップコーンを買いに行くぞ」
ポスターの下には、チケットを見せればポップコーンが割引となる旨が書き込まれていた。
(期間限定ハチミツポップコーン)
そこにあった限定品を必ず買おうと心に決めて、楓子はふたりを引き連れ映画館へ急ぐ。
閉ざされた廃病院の暗い廊下をペストマスクを掛けた男が鋸片手に歩き回る。ずず、ずず、と引き摺るは、最初の犠牲者となった恋人たちの血みどろ死体。
(やはり一番最初に犠牲になるのはバカップルか)
映画館の大画面の向こう、リノリウムの廊下にあり得ないほど流れ出す血糊を眺めつつ、楓子はハチミツポップコーンを口に運ぶ。
犠牲者となったはずの恋人たちがほぼ同時に息を吹き返し、鋸男に再度滅多切りにされる。
「きゃあっ」
隣の因が潜めた悲鳴をあげて肩にしがみついてくる。その口元が悲鳴に反して微かな笑みをたたえているようにも見えるのは、映画館の暗がりのゆえだろうか。
因にしがみつかれても一切動じず、楓子は切り刻まれてひとの原型をなくしつつある恋人たちを鑑賞し続ける。
(飛び散る飛び散る。なかなか凄惨だな)
ポップコーンを食べつつ、ふと気づいて自分を挟んだ反対側に目をやる。一言も声を漏らさず、端正な横顔を微塵も崩さず真剣に画面を見る蘇芳をちらりと見遣る。一瞬、不快げに眉が寄ったのは、映画の内容にというよりも因の悲鳴になのかもしれない。
その因の声も、画面から響き渡る女の大絶叫に掻き消された。
最早肉片と化した恋人たちを主人公の恋人である女が見つけてしまったのだ。
鋸男が女の背後に立つ。気配に気づいた女が振り返り、再び絶叫する。
(それにしてもこの女はよく叫ぶな)
逃げ出す女とそれを心霊現象じみた動きで追う鋸男とをポップコーン片手に眺め、楓子は冷静に分析する。
(生き残りそうだ)
廊下の端に追い詰められた女が、また叫んだ。
スタッフロールが全て流れつくし、暗かった館内にゆっくりと灯りが戻る。三々五々、立ち上がっては出ていく人々の流れに紛れ、楓子たちもスクリーンからロビーに出る。
ポップコーンの甘い匂いに溢れる廊下に出たところで、楓子は満足げな息を吐いた。
「とても面白かった」
「うう、因はとっても怖かったですよおっ」
桃色の瞳を涙でうるうるさせながら、因は華やかな色した髪をふるふると震わせて首を横に振る。楓子の腕にぎゅっと抱き着く。
「だって血がいっぱい出ててすっごく痛そうなんですもんっ」
その割には楽しそうな声してたよね、とは口に出さず、蘇芳は珍しく同意を示した。
「見ててあまり気分のいい物じゃなかったかな」
赤い絨毯が敷かれた廊下を同じ映画を見終わった人々と一緒に歩きながら、家族や周りの影響で演劇を学ぶ蘇芳は小さく零す。
(特にあの役者の演技が下手で見れたものじゃなかったね)
赤い瞳に冷徹な光を潜め、蘇芳は剥がし得ぬ柔らかな笑みの仮面を顔に掛ける。
「まあ、話自体はそこそこ楽しめたよ。誘ってくれてありがとう、楓子ちゃん」
(……なんて、)
腹の底、低く呟く。
他人と仲良く並んで映画を見ても、息抜きにもならなかった。さっさとふたりと別れ、最初の計画通りにコーヒーでも飲みに行こう。もちろん、ひとりで。
「そうだろう、特にラストシーンが良かった」
蘇芳の腹黒な心中など知らない楓子は無邪気にはしゃぐ。
「何と言っても、殺人鬼が主人公から報復としてありとあらゆる責め苦を受けた挙句のあの最期」
「ヒーローの所業じゃないですぅ」
――第二第三の俺が現れるであろうー!
そんな断末魔を残し、鋸男は惨めに溶鉱炉に沈んでいった。
「あのシーンは爽快だった」
いかにも本心から言い放ち、楓子は大きく頷く。おかげでいいストレス発散になった。
映画は映画で良かったけれど、それよりなにより、友人たちと映画を見るのはとても楽しい。
映画館を出る。春の日差しが爛漫と躍る空を仰ぎ、楓子は空色の瞳を眩し気に細めた。桜咲く春本番は、もうすぐそこ。
「今度は三人で花見でもしようじゃないか」
言葉にしてから、楓子はまたひとつ頷く。そうだ、それがいい。
満開の桜の下、三人で待ち合わせよう。
食べ物や飲み物を持ち寄ってもいい。いろんな店であちこち寄り道して買い込んでもいい。
行先は決めても決めなくてもいい。寝子島は、きっといろんなところで桜が咲く。行き当たりばったり、三人でそぞろ歩こう。
「お花見ですかぁ?」
きゃあっ、と因が両手を打ち合わせて跳ねる。
「そうですねっ、お花も綺麗ですし……怖い映画より楽しそうですっ」
スカートの裾をふわりと翻し、楓子の両手を取る。
「一緒に行きましょうね、楓子さんっ」
「蘇芳氏も」
因から横目にも見られず無視されたのをいいことに、素知らぬ風で不参加を決めていた蘇芳は、楓子に声をかけられ、今気付いたように目を瞬かせてみせた。
「って、え、」
「お花見をしよう、蘇芳氏」
「花見するの? このメンバーで?」
のんびりと頷く楓子の後ろで妙に可愛らしくイーッと歯を剥く因からわざとらしく視線を逸らし、蘇芳は楓子だけに向けて曖昧に微笑む。
「……ふふ、まあ都合があったら、ね?」
(さて、どういう風に断ろうかな?)
花見ともなれば、駅前よりも喧噪が激しいだろう。人間の密度も高いだろう。平気な振りは出来るけれど、疲れるには違いない。それに、また因と顔を合わせることになる。映画館では喋らずに時間を過ごせたものの、花見となればそうもいくまい。
きっともっと疲れる。
先を行くふたりに聞きとがめられぬ小さな小さな息を吐き、蘇芳は春色の明るい空を仰ぐ。
(……まあ、都合があったら、ね)
春の街を歩く三人を、桜を咲かせる春風が追い抜いてゆく。
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あとがき
担当マスター:
阿瀬春
ファンレターはマスターページから!
お待たせいたしました。
イライラをぱーっと発散するお話、お届けにあがりました。
……実はこっそり、ガイドにすることでみなさまのイライラもだもだの発散方法をお教えいただこうと思っていたのです。
ゲームセンターで発散、が思いがけず多くて、そうか、そうだよなあ、男子高校生だもんなあ……、と妙に納得してしまいました。
ゲームで発散、が簡単で効果的なのかしらとか思いつつ。でも、スプラッタ映画鑑賞ものんびり釣りも、わーっと暴れてしまうのも、どれもこれもいい発散方法ですよね。
少しでもお楽しみいただけましたら幸いです。
ご参加くださいまして、読んでくださいまして、ありがとうございました。
またお会いできますこと、楽しみにしております。
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阿瀬春
シナリオタイプ(らっポ)
シルバーシナリオ(150)
グループ参加
3人まで
シナリオジャンル
日常
定員
10人
参加キャラクター数
10人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2017年05月01日
参加申し込みの期限
2017年05月08日 11時00分
アクション投稿の期限
2017年05月08日 11時00分
参加キャラクター一覧
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