現実拡張アレスター｜リアクション

現実拡張アレスター

■寝子島高校防衛戦
　ケイサツチームはまずポータルの防衛を優先した。
　夜の九夜山を無理矢理下るのは危険なので山道を通る筈で、必然的に駅前ポータルが最も狙われるだろう……とは美咲紀の弁だが、皆多かれ少なかれ似た予測をしていたようである。
　とはいえ自分も相手もフシギな力を持った者。多少常識外れのことはしてくるだろう。
「駅は他の皆に任せて、うちらはここをキッチリ守っておこうねぇ」
　どうぶつクッキーを指の上で器用にもてあそびつつ、壬生由貴奈はちらりとポータルを見やった。
　寝子島高校の屋上に現われたポータル。巨大な招き猫が地面から浮いてぐーるぐーるしているというものだ。これにタッチされればこの拠点は陥落。
　逆に言えば、制限時間までにタッチされなければこちらの勝ちということでもある。
　勿論ドロボウを全員捕まえても勝ちになるのだが、ブロック単位でしか居場所を特定できないドロボウを捕まえるには目的地で張り込むのが一番なので、この配置は必然的なものだった。
　で。
「攻略する気がなくなるくらいガッチガチの砦にしちゃいましょー！」
　屋敷野梢は校内にあった机やら椅子やらを蝶に変えて引き連れ、オーケストラの指揮者さながらの身振りでたちまちのうちにバリケードを完成させてしまった。
「お、おい、なんだこれ！　いつのまにこんなもの作ったんだ！？」
　駆けつけたドロボウチームの誰かがバリケードの撤去を始めている。
　バリケードの裏で梢と由貴奈は顔を見合わせて片眉を上げた。
　飛んで火に入る夏の虫とはこのことである。
　どうぶつクッキーを三つまとめて口に含む由貴奈。と同時に駆け足からのジャンプで勢いをつけながら蝶に変身する梢。
　バリケードの小さな隙間をくぐり抜けた梢はすぐさま変身を解除。
　驚いたドロボウたちが階段を下りて逃げようとしたその途端に、由貴奈の操作した金属製バケツがひっくりかえって中身の液体を階段へとぶちまけた。
　ひょわーと言いながら階段を滑り落ちていくドロボウたち。
　梢は再び蝶になって階段をスルーすると、ドロボウにのしかかって肩をぽんとタッチした。
　がっくりうなだれるドロボウ。
　梢と由貴奈はビッと親指を立て合った。

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