現実拡張アレスター｜リアクション

現実拡張アレスター

■scene1 A-side　ドロボウたちの夜
　九夜山展望台。星のよく見える森の中に十人の男女が集まっていた。
　春前の星を眺めるためにやってきた寝子島の住民たちとはまた別に、彼らはこの島で行なわれる秘密裏のゲームに参加したのだ。
　檜山立樹が時計をちらりと見ると、午前零時まであと十分ほどといったところだった。
「時間前に１０人ぴったり集まったみたいだね」
　ゆったりと落ち着いた物腰から、彼が年長者だと知れた。学生ばかりの中で、大人は彼を含めて２～３人程度だ。
「この先情報交換の機会も増える筈だし、連絡先を交換しておこうか」
「電話？　メール？　どっちもちょっと微妙ね……」
　スマホをいじっていた椎井莉鳥が、グループＳＮＳのアプリを起動して見せた。これなら情報の共有が確実だろう。
　ドロボウ役のメンバーでグループを作るかたわら、どうして参加したんだと問いかけられて手を止めた。
「別に……気まぐれよ」
　中にはちょっとした因縁を背負って来ている者や、冒険心をくすぐられてワクワクしている者もいる。
　ジュスト・ランベールは前者だった。
　帽子を深く被り直して、この先の作戦を仲間と話し合っている。
「逃げるか攻めるか？　折角のゲームなんだから、ガンガン攻めなきゃもったいないよ！　きっと、あっちには姉ちゃんもいるだろうしね」
　いずれ来る因縁の対決に、ジュストは心を躍らせているようだ。
　一方で御剣刀は黙って頷き、クールに振る舞っている。
　……振る舞ってはいるものの、内心では自分一人で全ポータルを攻略するくらいの勢いで作戦を練っていた。
「俺たちが自分の能力をフルに活用するように、相手も全力で来るはずだ。技量の高低とは関係なく、相性による勝敗も計算に入れておかないとな」
　相性による勝敗。
　それは、このゲームにおける最大の要素……になるかもしれない。

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