現実拡張アレスター｜リアクション

現実拡張アレスター

■scene1 B-side　ケイサツたちの夜
「椿美咲紀です！　ミサキュウリとお呼びくだされなのです！」
　ところかわって寝子島中学校の校庭。
　キューブ型の檻を模したスタートポータル前に、ケイサツ役のチームが集合していた。
　連絡先を交換しつつの自己紹介タイムというわけである。とはいえ大半が顔見知りだったので、メンバー把握はすぐにすんだ。
　今はむしろ、ケイサツ気分を出すための時間である。
「なんでミサキュウリなんだ。いや……たまにそう呼んでいるけどさ」
　困り顔の八神修に、美咲紀はビシッと敬礼した。
「コードネームなのです！　ジーパンとかゴリさんとかなのです！」
「刑事ドラマかあ。最近見ないね、そういうの……それにしても、みんな元気だねえ」
　ふああとあくびをかみ殺しながらの日暮ねむる。
「日暮は日暮で眠そうだな」
「真夜中だよ。そりゃ眠いよ。八神君はちがう？」
「身体に悪い夜更かしではあるけど……たまには、ね」
　三人のやりとりは相変わらず、といった感じだ。
　とりあえず三人はドロボウが集中して狙いそうな場所を推測しながら細かい作戦をすりあわせ始めた。
　その一方で……。
「ジュストはいない、か……参加はしてる筈だから、ドロボウ役ってことかな。フフフ」
　レナ・ランベールは腕組み姿勢でにんまりとしていた。
「見つけた時にはどうやって捕まえやろうかな？」
　体力には自信のあるレナである。追いかけっこもなかなかに自信があった。
「おや、なんだか既に楽しそうですね」
　日向透が話しかけてきた。メンバーの中ではいちばんの年長者で、物腰も落ち着いているいかにも社会人ってカンジの男性である。
　アメリカンハーフ特有の目鼻のラインや色合いが神秘性を帯びているものの、フランス出のレナからすればその辺はさっぴかれる要素だったりする。
　……と同時に、レナの出自ゆえに『こいつ腹になんか抱えてるな？』という本能的直感が働いてもいた。とはいえ無害な相手だろうとも。
「だって、相手を追い詰めて捕まえるって経験そうそうできないでしょ。楽しそうじゃん」
「そうですか。それは……」
　にっこりと笑って、透は言った。
「楽しめると、いいですね」
　みんなそれなりに状況を楽しんでいるようだ。
　彼らの様子を一通り観察しおえた所で、壬生由貴奈はクッキーをひとくち咥えた。
「顔見知りがけっこーいるんだねぇ。ま、島の中でやるなら当然かぁ」
　くわえたクッキーをもぐりと口に含んで背伸びをする。
「それじゃあがんばっていこーかこずえちゃん」
「はいはい先輩、今日は本気出しちゃいますよー」
　ぐるぐると肩を回して、屋敷野梢はその場でアゲハチョウに変身した。翳した由貴奈の手の甲へとまると、ぱたぱたと羽根を動かす。
「うちらのタッグなら無敵だからねぇ」
　そして、午前零時のアラームが鳴り響く。

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