めがねびよりっ！｜リアクション

めがねびよりっ！

暖かな季節を感じる空の下。
夢呼・ステイシーは眼鏡を外し、それを少し観察する。
普段、雑に扱っているせいかレンズにいっぱい傷が入っている。

「このフレームも使い始めてからだいぶ経つし、いっそフレームごと新調するのもアリかもしれない」

それにもうすぐ４月。新しい学年になるし心機一転ってやつだな。
そう思い立つと旧市街にある『浅葱眼鏡店』へと足を運んだ。

「……いらっしゃいませ」

店主の浅葱あやめがカウンター越しに夢呼を迎えた。
店のなかは様々な眼鏡が並んでいる。
種類がかなり多いが、夢呼は枠が太めの眼鏡はちょっと苦手なので、
枠の細いものを中心によさげなフレームを探し始める。

夢呼は学校にいるときも、寮にいるときも、出かけるときも、
どんな服装をしていても基本的に同じ眼鏡を使う。
そうなると汎用性の高いものが理想的。フォーマルな場でも浮かず、
なおかつプライベートのちょっと砕けた場でも、堅すぎる印象にならないようなデザイン。

「……む、難しい」

欲しいものははっきりしているが、これがなかなか見つからない。
眼鏡の種類は豊富にあるので、とりあえず片っ端から掛けてみて、よさげなものを選ぼうとする。

「……うん、視力がダメ過ぎて、裸眼で眼鏡をかけても全然みえない。似合ってるのかどうなのか、全然分からんぞ……！」

ここで思わぬ落とし穴。
自分の顔を確認できないのでは決めようがない。
なんとか自分の顔がちゃんと見えるくらいに鏡に近づいて、どんな感じなのかをチェックする。

（ハタから見たら変な人だけど、まぁ眼鏡屋さんだし多分よくある光景だよナ）

そう思いながら夢呼は眼鏡を掛けては外すというのを繰り返した。
あやめはカウンターからその様子を伺っていたが、
真剣に選んでいるようだったので、声は掛けず見守ることにした。

眼鏡選びを始めてからどれくらい時間が経っただろうか。
夢呼はようやく、良いなと思えるものを見つけた。
細いフレームで、色は黒寄りのグレー。
これならプライベートでもフォーマルな場でも対応できる。
そう判断するとすぐさま購入を決意。
あやめに声を掛けると早速購入の段取りに入る。

まずは視力測定。それからフィッティング。
あやめはそういった作業を１つ１つ丁寧に行う。そしてケースとともに袋にしまうと夢呼に手渡した。

夢呼はいくつも試着して選んだ、お気に入りの眼鏡を掛けるのを楽しみに帰路についた。