めがねびよりっ！｜リアクション

めがねびよりっ！

「そろそろ新しい眼鏡を買いにーと来てみたけど……」

志波武道は『浅葱眼鏡店』のなかをゆっくりと歩く。
視界には様々な種類や形の眼鏡が丁寧に並べられており、それらをわくわくした気持ちで眺める。

「いやぁやっぱ楽しいよねじっくり選ぶの☆」
「いくつか持ってるけど、けっこうガタがきてるのが多くなってきたからな……」

そう呟きながら自分が掛けている眼鏡に手をやる。
どうしても使っているうちに塗装が剥げたり緩くなったりしてしまう。
今回は新学年に向けて新しいのを１つ買おうという気持ちでやってきた。
しかしいくつか試着してみたが、なかなか決まらず武道は悩んでいた。

「アンダーリムのも好きだけど、フルもリムレスもすきなんだよね」
「とりあえずデザインはシンプルでいいな、色ははっきりした色合いで」
「あとは、お値段ダネ……」

彼はあらゆる選択肢から１つに絞ろうと、店内に置かれている眼鏡をよく見る。
すると、道が開けたようにある眼鏡に注目した。
シンプルなデザイン、はっきりと主張した色合い。
値段は財布事情を考えるとやや厳しいが、買えない額ではない。
ここまで条件が揃えば、行動はひとつ。店主である浅葱あやめに声をかける。

「すみません、これくださいナ！」
「……ありがとう、ございます」
「あ、伊達眼鏡なんで度無しレンズにしてほしいんですけど」
「……かしこまりました」

あやめは作業のために一旦カウンターの奥へ移動する。
その間も武道はあれやこれやと眼鏡の試着をしたり眺めたりとこの空間を楽しんでいる。
そのときふと、あることを思い出した。

「あ、そだった……これ、調整できますか？」

そう言いながら武道が取り出したのはリムレスの眼鏡だった。

「結構つけてたから、ねじ部分がゆるんだっぽくて。着けてたらずり落ちちゃってしかたないんですよね」
「デザイン好きなんですけど、リムレスは扱い少し難しいですよねー……」

武道は少し悩ましい表情を浮かべる。
しかし、あやめは認定眼鏡士の資格を持つほどの腕前である。そういった心配は無用だった。

「……大丈夫です。調整、できます……」
「マジですか！？　お願いします！」
「……お預かり、します……」

あやめはその眼鏡を丁寧に受け取ると再び作業に戻る。
まずは伊達眼鏡にレンズをはめ、微調整を行いながらフィッティング。
武道は自分の直感どおり、見事に顔に合っているのを感じた。

続いてリムレスの眼鏡。
こちらはまずねじ部分を慎重に直し、形を適正な状態に戻す。
それが完了してから視力測定とフィッティング作業へ移る。
武道は、もう掛けるのは無理かもしれないと思っていたリムレスが本来の姿を戻るのが嬉しかった。
諸々の作業が終わり、それらを袋に収めると会計を行う。

「……２つ３つと気になるのがあったけど、きょ、きょうは１つで！　お金を貯めてまたきまっす！」
「……ありがとう、ございました。また、どうぞ……」