狼子島人狼殺人事件｜リアクション

狼子島人狼殺人事件

● まさか！　――第二の殺人！？

「きゃあああああああああ！！！」

　北校舎に絹を裂くような悲鳴が響き渡る。
「この声……アカリくん！？」
　図書室で現場検証の続きと推理をしていた衛は、悲鳴を聞くなり廊下に飛び出す。声は階下から聞こえた。
「くそっ……アカリくん……無事でいろよ！」
　衛は階段を駆け下りる。
　２階か。いや、人影はない。ならば１階か。
　三段抜かしに階段を下り、１階の廊下にたどり着く。
　まっすぐ前方、保健室の前に蹲るアカリの背中を見つけ、衛は叫ぶ。
「アカリくん！！」
　アカリはゆっくりと振り向いた。

「卯木……どうしよう……な、楢木が……し、死んでる……」
「なんだって！！！」
　駆け寄る衛。そこには、頭を殴打され血を流した春彦の死体が転がっていた。

◇

「なんということだ……楢木までやられるとは……」
　誰かのすすり泣く声がする。
　駆けつけた遥斗が彼の死体に手を合わせ、その顔にそっとハンカチを掛けた。
　春彦の死体が発見されてからまもなく、保健室前にはふたたび探偵一同と早川先生、瓜山先生、フジコ先生、秘子、それから茂と貴子に両脇を固められた桐島先生が集まっていた。
　ここまで言えばもう、お分かりだろう。ひとりだけ姿を見せていない人物がいる。
　鷲尾先生だ。
　咄嗟の犯行だったのだろうか、血の跡が点々と保健室の中に続いている。
　もう、能美子に鑑定してもらうまでもない。
　扉の脇に用心深く立った遥斗が、一気に引き戸を開け放った。