狼子島人狼殺人事件｜リアクション

狼子島人狼殺人事件

● 一件落着？　――そんなわけない！

　１０名の探偵だけが残された視聴覚室。
　しかしそこに事件解決の晴れ晴れとしたカタルシスは存在しなかった。
　じっとりと澱む重たい空気が、誰一人これで解決だとは考えていないのだと暗に告げる。
　口火を切ったのは梢だった。

「桐島先生を糸口に事件の全貌が明らかになれば、とは思っていましたが、私は桐島先生が犯人だと思ってるわけじゃないんです……もしも犯人が、桐島先生が何度も放課後の時間を見計らってそのような勉強をやっていたことを知っていたとすれば、犯行が行われた時刻に桐島先生が現場に近い３Ｆ視聴覚室にいたのは『偶然』ではなく、犯人が桐島先生を犯人に仕立て上げるために狙った『必然』ということになります。なにより、ロコミケパンフを凶器に使って放置してるあたり、ロコミケ関係者が犯人とは思えません」
　頭をポリポリと掻いて、流がそれに賛同する。
「桐島先生を追い詰めといてナンだけど、俺もそんな気がするわー」
　
　桐島先生は犯人ではないのかもしれない。そんな空気が探偵たちの間に広がってゆく。
「うー……」アカリが呻く。
「これって、もういちど容疑者に話聞かねーとじゃね？　犯人がいるって考えると会うのこえーけど……聞きに行かねーとダメ、だよな。瓜山先生の手紙も気になるし……呼び出したのが誰かわかれば、ヒントになるかも……？」
　そうですね、と綾花も頷く。
「みなさん、もういちど、関係者の証言や証拠品を洗い直して、推理をしなおしてみませんか？　私、先生たちにもう一度話を聞いてみます！」
　綾花が視聴覚室を飛び出すと、探偵たちも次々と後を追う。
　取り残された春彦は、所在なさげにあたりをきょろきょろ見回した。
　みんなの推理を聞いて、なるほど、そういうことかと思ったりはするが、自分の頭は混沌としていて、本当の犯人が誰か見当もつかない。そもそも春彦は、頭より体を使うほうが性に合っている。
「俺もナンかしたほうがイイよなぁ……んー適当にその辺プラプラしてみっかなー」